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ジャーナリスト浅野詠子

メガソーラー建設現場の盛り土、降雨で再び崩落、町道に流出 奈良県平群町、住民が知事に改善命令を申し出

盛り土が崩落したメガソーラー建設現場=2025年5月25日、奈良県平群町、住民撮影

盛り土が崩落したメガソーラー建設現場=2025年5月25日、奈良県平群町、住民撮影

 奈良県平群町内のメガソーラー(巨大太陽光発電施設)の建設現場で先月24日から25日にかけて、降雨により盛り土が崩落し、流出した土砂が町道(フラワーロード)に達したとして、建設に反対する住民ら31人が6月11日、熱海土石流災害(2021年)を教訓として施行された新・盛土規制法に基づく立ち入り検査や改善命令などを業者に行うよう、県行政手続条例に基づき山下真知事に申し出た。

 住民ら10人が県庁を訪れ、現場写真の入った申し出書を手渡した。申し出書によると、崩落した土砂は高さ1.1メートルのガードレールを乗り越え、幅20メートルにわたって町道に流れ出てきたという。先月24日の雨量は最大で1時間当たり20ミリ(同日午後11時ごろ)で、原因は仮設沈砂池などの防災設備や排水対策に問題があると指摘している。

 この日は、林地開発の許可を出した県森林環境課など関係する2課が対応。町議の須藤啓二さんは、盛り土崩落により土砂が流れてきた町道でバイクが転倒したことを挙げ、「けがはなかったが、昨年11月2日も同じ建設現場で土砂が流れ出る事故が起きており、地域で不安が広がってる」と述べた。

 また、麓のニュータウンに住む女性は「大和川豪雨災害(1982年)の当時は、高台に住んでいるから大丈夫だろうと思った。今ごろになってなぜ水害の心配をしなければならないのか。自然環境が良いから奈良県に移住してきたのに、ソーラー開発で森が伐採され、はげ山になった現場を見るたびにストレスが高まる」と訴えた。

 一方、県森林環境課は、盛り土崩落発生後、業者が自主的に対応に当たったと説明した。

 同課は取材に対し「要望書をすべて読んでおらず、直ちにコメントすることは控えたい」と話した。

 メガソーラーの開発面積は48ヘクタール(山林伐採面積30ヘクタール)。

盛り土崩落で県に要望する平群町の住民ら=2025年6月11日、奈良県庁、浅野詠子撮影

盛り土崩落で県に要望する平群町の住民ら=2025年6月11日、奈良県庁、浅野詠子撮影

筆者情報

視点)奈良県平群町のメガソーラー裁判から見える治水の争点 地裁が県基準容認 住民側控訴

森林が伐採されたメガソーラーの建設現場=2025年3月31日、奈良県平群町、浅野詠子撮影

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