奈良県)県営住宅の連帯保証人免除 生活保護利用者など対象も 2親等内の親族いないこと条件
奈良県は、県営住宅の新規の入居者や入居者の死亡または退去に伴い入居を承継する同居者に対し、連帯保証人を求めているが、2018年3月、県営住宅条例を改正して、連帯保証人を免除できる規定を追加した。生活保護利用者やDV被害者、障害者、高齢者などを対象としているものの、「2親等内の親族がいない者」との条件を設けていることが、県への取材や県から提供を受けた「県営住宅における連帯保証人の免除に関する要綱」(文書)で分かった。
親族がいても連帯保証人を引き受けてもらえないケースもあり、この条件を画一的に適用すると、困っている人を排除してしまうことにならないか。
条例改正では「特別の事情があると認める場合は、連帯保証人を定めないことおよび誓約書に連帯保証人の連署を必要としないこととすることができる」との規定が追加され、要綱で免除の対象者や条件を具体的に示した。
疎遠の妹を頼れず
奈良市内の県営住宅に住む生活保護利用者の女性(59)が離婚後、退去を迫られている問題(2019年3月9日既報)。女性は、夫が出て行った後も住み続けることを希望したものの、名義人が夫から自身に変わるのに伴って求められた連帯保証人を見つけられなかった。女性には2親等に当たる妹がいるが、疎遠になっていて頼れなかった。
女性の入居承継が生じた時期は2017年で、条例改正以前のため、連帯保証人免除の規定はなかったが、親族を頼れないこの女性のような境遇にある人は免除の規定があっても救済されない。県住まいまちづくり課はこれまでの取材で、この女性の場合を要綱に照らしたとき「特別の事情には当たらない」と答えている。
公営住宅の賃貸について、連帯保証人や保証人の免除制度を設けている全国の自治体には、親族がいないことを条件にしていないところもある。
市営住宅がある佐賀市も要綱で連帯保証人免除の対象者を示している。市のホームページ上で免除に該当する例を挙げ、親族に関しては「親子絶縁状態や数十年来交流のない状態」「親族はいるが生活保護者などで保証能力がない」「亡き配偶者の親族のみで交流がない」などを理由として認めている。
また、同様に市営住宅がある名古屋市の市住宅管理課居住係は取材に対し、「努力して保証人を探しても見つからないケース、親族がいても断られるケースがある」とした。
佐賀市、名古屋市のいずれも連帯保証人や保証人に代えて、緊急時の連絡先を登録するよう求めている。
奈良県から退去を迫られている女性は、住居の明け渡しなどを求める訴えを起こされている。女性は県と争っており、4月22日、2回目の口頭弁論が奈良地裁である。【続報へ】