県唯一ヴォーリズ建築の現況平面図、有志が調査 奈良、栗盛吉蔵旧居の保存運動を記録に

ヴォーリズ建築の栗盛吉蔵旧居=2026年1月22日、奈良市高畑町、浅野詠子撮影
米国出身の著名な建築家、ウイリアム・メレル・ヴォーリズが設計した奈良県内で唯一とされる奈良市高畑町の建物の保存運動を担う「高畑・旧栗盛吉蔵邸の保存・活用を進める会」(大槻旭彦代表世話人)が2025年12月、4回にわたって建物調査を行い、現況平面図を今月、完成させた。
日本画家の栗盛吉蔵が約90年前に建てた洋風建築。木造瓦ぶき2階建てで、外壁はモルタル。なら・町家研究会所属の建築士4人と県建築士会の建築士1人が家屋平面の実測調査を行った。1階(107平方メートル)にある広々とした書斎が、栗盛が1944年に郷里の秋田県に帰るまで使っていた画室の可能性が高いという。「栗盛の時代は畳敷きだった可能性もある」と指摘する会のメンバーもいる。
現況平面図を作成した、なら・町家研究会の渡邊有佳子さんは1月11日に奈良市内で開かれた会の会議で「平面図を作成して分かったことは、和と洋がバランスよく混ざる和洋折衷の建物。柱を見せる半割柱などを利用して和の空間を意識的に作りだしていると思われる所もあった。2階茶室の縁側にはバルコニーのような手すりが設けられ不思議な空間。階段の勾配は緩やかで、和風建築にはあまり見られない感覚だ」と語った。
建物は20年近く空き家になっていたが、住宅メーカーの大手、大和ハウス工業が2025年3月、取得した。同社は同年5月の大型連休後にも建物を取り壊し、土地を販売する準備を進めていたが、社の動きを知った郷土史家の大槻さんらが同年6月、「保存・活用を進める会」を結成。同社との話し合いを続けながら、現地見学会やヴォーリズ建築に詳しい研究者らを招いた講演会などを開いてきた。
建物は老朽化が進んでいる。会は今後も建物の特徴などについて調査し、保存運動について何らかの形で記録化することを検討している。これまで奈良市内では、志賀直哉旧居やJR奈良駅旧駅舎など、解体の危機にあった近代建築の保存運動が成功した経緯が文書で残されている。
筆者情報
- ジャーナリスト浅野詠子
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