奈良県)国保の県単位化、3人に2人知らず 保険料に負担感も 民医連が受診者にアンケート
国民健康保険のアンケート結果について記者会見する奈良民医連の横山会長(中央)ら=2019年10月9日、奈良市の奈良県庁県政・経済記者クラブ記者室
奈良民主医療機関連合会(会長/横山知司・社会医療法人健生会理事長)は、加盟する奈良県内3医療法人の病院・診療所の受診者を対象に、国民健康保険に関するアンケートを実施、9日県庁で記者会見し、結果を発表した。それによると、多くの市町村で保険料の上昇が予想される、国民健康保険の県単位化について、回答者の3人に2人が知らないとする一方で、保険料を負担と感じている人も3人に2人の割合でいた。
県は国の方針を受けて、2018年度から、国民健康保険をそれまでの市町村単位から県単位に移行させた。これに伴い、県内39市町村の保険料を2024年をめどに統一化を図るとしている。保険料収入に加え、一般会計からの繰り入れで保険料を抑制してきた市町村では、保険料の上昇が予想されている。
調査は2019年6月1日から8月31日までの期間に、受診者の国民健康保険被保険者約800人にアンケート用紙を配布するなどし、562人から回答を得た。58.2%が65~74歳の前期高齢者で、年金生活者が70.1%を占めた。世帯年収は300万円未満の人が69.9%で、200万円未満の貧困層といわれる人も37.4%いた。保険料が負担となる人が多数を占めた。
国民健康保険の県単位化については、65.1%の人が知らないとした。保険料が昨年より値上がりしたかの問いには、22.4%の人が値上がりしたと答えた。保険料に対しては、64.1%の人が高く負担と感じるとし、3.8%の人は過去に滞納したことがある、または現在滞納していると答えた。
治療代などでお金がかかるため病院に行くのを先延ばししたことがあるかとの問いには、13.5%の人があると答えた。また、同様に治療を中断したことがあるかとの問いには、6.6%の人があると答えた。
記者会見では、保険料を滞納して保険証が発行されなかった事例も紹介された。60代の患者は、抗がん剤治療のため定期的に通院が必要であるにもかかわらず、役所の国民健康保険の窓口で、提示された額に足りる金を支払えず、保険証の交付を受けられなかった。患者の担当のケアマネジャーが交渉して、1カ月の短期保険証の交付に至ったという。窓口の対応の問題が指摘された。
横山会長は「国民健康保険はセーフティーネットとして重要な役割を担っている。保険料の負担増がどのような影響を及ぼすか実態を調べた。誰でも安心して医療に掛かれるよう、保険料統一化の見直しや国保財政への国庫負担の大幅増額を訴えていきたい」などとした。