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第1回「奈良の声」読者会の報告

浅野善一

注視・定数削減)奈良県安堵町議会、1人減の8人に 「なり手不足」理由も検討過程の会議非公開 改正案提出、事前告知なし

奈良県安堵町議会の12月定例会本会議。議員定数削減案を可決した日、傍聴席に住民の姿はなかった=2025年12月5日、同町役場、浅野善一撮影

奈良県安堵町議会の12月定例会本会議。議員定数削減案を可決した日、傍聴席に住民の姿はなかった=2025年12月5日、同町役場、浅野善一撮影

 奈良県安堵町議会は12月4日の定例会本会議で、議員定数を1人減の8人とする町議会議員定数条例の改正案を賛成多数で可決した。発議した議員は「なり手不足」を理由に挙げた。議会の全員協議会で「検討を重ねてきた」という。しかし、この会議は非公開だった。同改正案を含む今定例会の提出議案について事前の告知もしていない。この日、傍聴席に住民の姿はなかった。

 「奈良の声」が議会事務局に確認したところ、全員協議会の開催は10月7日と14日の2回で、非公開だった。町ホームページに同条例改正案を含む今定例会の提出議案の事前情報はなく、定例会初日のこの日、傍聴席入り口に提出議案が記載された議事日程が用意された。

 条例改正を発議した森田瞳議員(無所属)が本会議で述べた提案理由は次のようなものだった。

 「議会は、直面している議員のなり手不足に対応するため、議員報酬、選挙運動の公費化、議員定数の見直しの3点をセットに、全員協議会で検討を重ねてきた」

 議員のなり手不足については、全国の町村議会が無投票や定員割れの厳しい状況にある中で、安堵町議会でも2023年の議員選挙で無投票になったとし、「今後、無投票や定員割れを防がなければならない」と主張した。

 さらに町の人口減少を挙げて、安堵町を含む西和7町で議員1人当たりの人口を比較、「安堵町が最も少なく765人。ほか6町の平均が約1760人となっており、持続的な地域民主主義を実現する面においても十分可能な人数」との見解を示した。

 同議員はこれらを理由に「1人減員し、議員おのおのがその役割をより一層効率的に責任を持って果たしていくよう努力すべき」と訴えた。全議員9人のうち、森田議員のほかに7人が賛成者として発議に名前を連ねた。

 討論では、上林勝美議員(共産)が反対意見を述べた。同議員は、二元代表制の下では「議会は住民の声を代弁し、住民の意思を行政に反映させるパイプ役であると同時に、行政の長をはじめとする執行機関のチェック役として、その独断と暴走を防ぐという重要な役割を併せ持っている。定数削減は議会制民主主義の重大な後退を招く」と訴えた。

 採決では、採決に参加しない議長を除く8人のうち7人が賛成した。傍聴席に記者(筆者)以外の傍聴者はいなかった。

 「奈良の声」は独自に西和7町(安堵町、三郷町、平郡町、班鳩町、上牧町、王寺町、河合町)の安堵町とそれ以外の6町の人口と議員定数を各町のホームページなどで確認、比較した。人口は安堵町が7000人弱であるのに対し、ほかの6町は約1万6000人から約2万7000人で2倍から4倍の開きがあった。

 議員1人当たりの人口は、自治体の人口規模が大きくなるほど増える傾向にある。奈良市は人口約34万5000人に対し定数39人で約8800人。一方、6町とは別の近隣の人口規模が似ている川西町は人口約7600人に対し定数12人、三宅町は人口約6000人に対し定数9人だった。

 安堵町は2016年に定数を10人から9人に削減している。改正条例は次回の選挙から適用される。現在の議員の任期は2027年4月まで。

 この日は、ほかに町議会議員と町長の選挙運動を公費で負担する条例の制定と、議員報酬を引き上げる条例改正についても全会一致で可決した。

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