奈良連隊の加害の歴史や祝園弾薬庫増強計画から平和考える 奈良で市民団体が集会

奈良連隊と日中戦争の関わりを示す写真を紹介する田中正志さん(左端)=2025年12月14日、奈良市大安寺1丁目の県人権センター、浅野善一撮影
奈良県内の市民団体による集会「戦争への道をとめるのは今!」が12月14日、奈良市大安寺1丁目の県人権センターであった。陸軍歩兵第38連隊(奈良連隊)と日中戦争の関わりや陸上自衛隊祝園分屯地(京都府精華町)の弾薬庫増強計画など、県民にとって身近な戦争の歴史や現在の問題を取り上げ、平和について考えた。
平和や人権問題に取り組む19の団体でつくる実行委員会(事務局・中西巌さん)が主催した。
「屯鶴峯地下壕(香芝市)を考える会」の田中正志さんは「南京事件と奈良38連隊」と題して講演した。奈良連隊は現在の奈良教育大学(奈良市)の敷地にあった。田中さんは、連隊の兵士だった親族が持っていた写真アルバム「北満派遣記念写真帖」に収められた写真や今年9月に訪問した南京事件ゆかりの地の写真をスクリーンに映しながら、日中戦争当時の連隊の中国での足跡の一端を紹介した。
田中さんはアルバムを見て「ショックだったことが二つあった」と話した。一つは、連隊の部隊が匪賊(ひぞく)討伐と称して日本の支配に抵抗する人たちに行ったことの残虐さ。もう一つは、その部隊の凱旋(がいせん)を今も残るJR奈良駅舎前で歓迎する大勢の人々の姿。写真は1935、36(昭和10、11)年ごろのもので、スクリーンには凄惨(せいさん)な姿の遺体や捕らえた「匪賊」の首を切り落とそうと刀を振り上げている兵士など生々しい写真が映し出された。
田中さんは「奈良県には加害の歴史もあるということを記録し、記憶に残してほしい」と訴えた。
奈良県に近い祝園弾薬庫の増強計画に反対する住民運動に関わっている八木健彦さん(奈良市)は「『台湾有事』を理由とした大軍拡を止めよう」と題して講演。10月19日に精華町内で開かれた同運動の全国集会の盛り上がりを紹介しながら、同弾薬庫の増強でミサイルが配備保管されれば「関西圏の軍事化がどんどん進行する」と指摘した。
八木さんは最近の高市早苗首相の「台湾有事」存立危機事態発言の背景にある認識を分析、これに対し「(私たち)一人一人の発言や行動が強い世論をつくり、(過去の過ちを繰り返さないために)高市首相に発言の撤回を求めていかなければならない」と訴えた。
集会の後半では、戦時中、山口県宇部市の長生炭鉱で起こった崩落事故で犠牲になった朝鮮人労働者の多数の遺骨が海底の坑内に取り残されたままになっている問題について、遺骨の収集に取り組む「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」共同代表井上洋子さんらが報告を行った。
筆者情報
- 浅野善一
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