ニュース「奈良の声」のロゴ

地域の埋もれた問題に光を当てる取材と報道


第1回「奈良の声」読者会の報告

浅野善一

予算と落札額の差額1300万円で備品追加購入 奈良県香芝市監査委員「議会への説明責任果たすべきだった」 一般会計決算の認定巡り

奈良県香芝市の2024年度一般会計決算の認定について審議した市議会決算特別委員会=2025年12月12日、同市役所、浅野善一撮影

奈良県香芝市の2024年度一般会計決算の認定について審議した市議会決算特別委員会=2025年12月12日、同市役所、浅野善一撮影

 奈良県香芝市の2024年度一般会計決算に対する市議会の審査で、市が予算の不用額を議会の議決や議会への説明を経ないで使用したことが問題になっている。市は、事務用備品の購入に当たって議会で議決された予算案の額約3000万円と入札による実際の落札額約1600万円との間で生じた不用額を、新たな物品の購入に充てていた。議会の請求でこのほど行われた監査で市監査委員は「違法性は認められないが、議会への説明責任を果たすべきだった」と指摘した。

 問題は、決算の審査が行われた今年9月の市議会定例会で明らかになった。事務用備品の購入費は、市役所の職場環境の改善や住民サービスの向上を目的として、2024年9月の市議会定例会に提出された補正予算案に計上された。金額は3020万円で予算案は可決された。備品の内訳は事務机210台、ワゴン245台、事務いす250脚、会議テーブル6台。購入は同年11月に一般競争入札により行われ、約1638万円で落札された。約1381万円の不用額が生じた。市はこれを市役所休憩スペースの備品やふるさと納税返礼品展示ケースなどの購入費用に充てていた。

 川田裕議員(無所属)から「不用額を新たな補正予算を提出せず、議会の議決を経ないまま、当初の予算で説明された目的とは異なる費用に充当した」として、市監査委員に監査を求める決議案が提出され、可決された。このため決算は認定に至らず、継続審査となった。現在開会中の12月定例会であらためて審査が行われている。

 監査結果は11月27日付で議会に報告された。それによると、市は不用額のほぼ全額を新たな物品購入の費用に充てていた。購入は、ほかに庁舎内の防犯カメラや庁舎懸垂幕昇降装置、各課の備品など、2024年度末までに17回にわたった。

 これについて監査委員は、その後の備品購入費が当初の補正予算案の備品購入費と同じ総務費の科目で支出されていることを挙げ、異なる目的に使われたとは考えられないとし、「適法の範囲内での執行」との判断を示した。一方で「当初予算編成時に予定のなかった事業の実施に不用額を用いる行為については、金額の多寡を鑑みれば議会に対する説明責任は果たすべきであった」と指摘、「二元代表制の意義を損ないかねない」と警鐘を鳴らした。

 今定例会で同決算の審査を付託されている市議会決算特別委員会(小西高吉委員長、6人)が12月12日にあった。監査結果を踏まえて審議が行われた。三橋和史市長は「入札など行政の尽力による不用額が発生したのであれば、そのまま不用額として補正するのではなく、何らかの形で当該年度の予算として市民のために執行するのは、市長としての責務であるという、監査委員の意見もある」と反論。一方で「議員への説明は、私だけでなく職員も自らの仕事の一部であるということをしっかりと自覚した上で、これからも説明を尽くし議会との協調関係を重んじて市政に臨んでまいりたい」と述べた。

 この日は委員から新たな指摘もあった。複数回にわたった不用額による備品購入の大半が同一業者への随意契約だった。今年2月には、同じ日に4件の随意契約があったが、課ごとにいずれも机、いす、ワゴンを購入していた。市契約規則は、財産の買い入れで随意契約が可能な額は80万円(当時)としていて、個別にはこれを下回っていた。しかし、一括して購入すれば一般競争入札を実施する必要があった。

 市総務部長は「今後は(年度の)当初予算のときにしっかりと計画を立て、(購入の)事務がばらばらすることがないよう心がけたい」と釈明した。

 採決に当たっての討論では、川田委員は決算の認定に反対する立場から意見を述べ、「監査結果は議会が指摘した項目に一切触れておらず、監査すらされていない」などとした。

 一方、木下充啓委員(香芝市議会自由民主党)は賛成の立場から意見を述べ、「入札差金の扱いについては、今後このような疑義が生じることがないよう何らかの対策を取っていただくようお願いして賛成討論とする」とした。

 採決の結果は賛成多数。賛成が3人、反対が2人だった。委員会として2024年度一般会計決算を認定した。12月17日の定例会本会議で、小西委員長の報告を受けて採決が行われる。

筆者情報

読者の声