奈良県のメガソーラーガイドライン導入、7年前に検討表明も着手至らず後手に
2014年、県森林審議会で委員からガイドラインの策定要望が出ていた天理市福住町のソーラー事業地=2021年12月12日
奈良県が7年前、天理市内のメガソーラー計画を巡って、県森林審議会でガイドライン策定を求める委員の意見に対し「課題として検討する」と述べながら、着手に至っていなかったことが分かった。
県は本年6月、平群町内のメガソーラー問題を受けてガイドライン導入を表明したが、同町の計画地は本年、業者が県に提出した開発申請書類に不正確な記載が見つかりながらも、この間に森林はすでに消失。直下の住民に豪雨災害などの心配が広がっており、県の対応は後手になっている。
2014年11月、森林法に基づく県森林審議会の林地開発審査部会で審議されたのは、天理市福住町の森林面積約34ヘクタールの市有地(旧工業団地予定地)など(一部桜井市内)に民間企業が計画したメガソーラーで、現在稼働している。
このとき、田中和博委員(森林科学)が「奈良県として太陽光発電のガイドライン的なものを定めるよう、関係課と検討してもらいたい」と要望し、事務局の林業振興課(現・森と人の共生推進課)は「今後の課題として検討する」と答弁した。
本年6月、荒井正吾知事が定例県議会でメガソーラーのガイドライン導入を表明するまでの間、どのような検討が行われていたか、記者は県情報公開条例に基づき検討した経緯が分かる文書を開示請求したが、県は「作成していない」として不開示決定をした。
森と人の共生推進課は「組織内で多少の議論はしたが、本格的に文書を作成して残すまでには至らなかった」と話す。
隣県の三重県が太陽光発電施設の適正導入に係るガイドラインを策定したのは2017年。事業者に対し関係法令の遵守だけでなく、計画段階の早い時点での住民への情報提供を促し、地域住民の理解が得られなければ、操業することが難しい内容になっている。
同県のガイドライン策定の2年後、山添村の馬尻山において、面積が81ヘクタールに及ぶ巨大ソーラー事業が浮上。外観はまったく同じに見える隣接地の三重県名張市内の山林を避けるようにして、民間会社はソーラー計画地の線引きをしている。
反対する村民は「村民が日常の飲料水に使う簡易水道の水源が直下にあり、水質の悪化や土砂災害など大変心配です。ガイドラインを策定した三重県を避けて企業は奈良県の立地を選んだのだろうか」と話す。 関連記事へ