奈良県域水道一体化 26市町村が参加と回答
市町村長らが県域水道一体化について協議した県広域水道企業団設立準備協議会=2022年11月29日、大和高田市内
奈良県は12月26日、県域水道一体化に26市町村が参加すると回答したことを発表した。26市町村を合わせた給水人口は91万8358人(2021年度)。2025年度、統一料金による企業団(一部事務組合)の事業開始を目指す。県は、この日を期限に参加・不参加を回答するよう各市町村に照会していた。
内訳は、橿原市など県営水道を受水する22市町村と吉野川流域の五條市など4市町村。奈良市と葛城市は不参加を表明しており、一体化の企業団設立協議から離脱している。
県は、大滝ダム(川上村)のゆとりある貯水を主水源として、当初、簡易水道(給水人口5000人以下)を除く、県内全ての市町村水道と県営水道(用水供給事業)を一つにすることを構想した。荒井正吾知事肝いりの「奈良モデル」の一つに位置付けられていて、給水人口131万人の全国初の大型統合を目指した。効果額を800億円(経費削減額と国庫・県補助金などの合算)と打ち上げたこともある。
目玉は市町村営11浄水場の廃止だったが、うち4カ所は2市の不参加により存続、さらに生駒市と大和郡山市の2浄水場(水源、地下水)も県の方針変更により残る方向。旗印にした全体最適化は修正に向かうことが余儀なくされそうだ。
県と26市町村は、来年3月の議会定例会に企業団(一部事務組合)の設立に向けた法定協議会の設置を提案する。
県域水道一体化に参加すると回答した市町村
大和高田市、大和郡山市、天理市、橿原市、桜井市、五條市、御所市、 生駒市、香芝市、宇陀市、平群町、三郷町、斑鳩町、安堵町、川西町、三宅町、 田原本町、高取町、明日香村、上牧町、王寺町、広陵町、河合町、吉野町、 大淀町、下市町
参加しない市町村
奈良市、葛城市
県域水道一体化の動きと関連の出来事
2013年3月 工事に50年の歳月をかけた大滝ダム(国土交通省)が川上村に完成。県は高度成長期の水需要予測を基にした巨額なダム建設負担金を支払って参加。水余りの時代が到来し、県営水道(用水供給事業)の対応が迫られるようになる。
2016年3月 県内給水人口第2位の橿原市が市営八木浄水場(水源、地下水)を廃止し、大滝ダム系の県営御所浄水場からの受水100%に転換。
2016年11月 大滝ダムを主水源とする水道広域化による市町村営浄水場廃止の効果額などを試算するため、県がコンサルタント業務を発注。
2017年10月 県が「県域水道一体化の目指す姿と方向性」を県・市町村サミットで提示。水源はダムのみとし、県営水道受水市町村の浄水場(奈良市営緑ケ丘浄水場を除く)を廃止する構想を打ち出す。
2018年4月 県域水道一体化懇談会が発足。この前後から、浄水場を廃止して県営水道の受水100%に踏み切る市町村が続出する。
2019年10月 水道民営化に新たな道を開き、広域化を推進することを主な柱とした改正・水道法が施行
2020年6月 大和郡山市が水道の内部留保資金82億円のうち28億円を一般会計に移転。すべての資産持ち寄り方針を掲げる荒井正吾知事と意見対立。
2020年8月 県は2017年の緩やかな経営統合方針(10年以内に料金統一)を改め、2025年に一体化受け皿の企業団(一部事務組合)設立と同時に料金を統一する方針を県水道サミットで示す。
2021年1月 県と27市町村が水道事業統合に向けて覚書を締結。大和郡山市は加わらず。
2021年3月 大和郡山市民の「ルールなき県域水道一体化に参加しないことを求める」請願を市議会が全会一致で採択。
2021年8月 県広域水道企業団設立準備協議会(会長・荒井知事、県と27市町村)発足。
2021年12月 県が一体化の統一料金を試算し、1立方メートル当たり178円を示す。単独経営をすると企業団より料金が高くなると試算した市町村の根拠について、県は奈良市議らの開示請求に対し、2022年に不開示決定した。
2022年2月 水道会計累積赤字市町村を救済する方針を県が固める
2022年5月 奈良市が学識経験者や市議らに一体化への参加の是非や意見を聞く懇談会(座長、浦上拓也近畿大学教授)を設置し初会合。8月まで5回開催し、延べ213人の市民が傍聴。
2022年6月 葛城市区長会(44カ大字)が県域水道一体化への不参加求め市議会に陳情、「市の判断で価格設定できる命の水が大切」と訴える。
2022年6月 葛城市民が一体化に対し「市民に説明し声を聞くよう」求める請願を出し、市議会が全会一致で採択。
2022年9月 生駒市民が一体化の「市民への周知等に関する」請願を出し、市議会が全会一致で採択。
2022年10月 奈良市の仲川げん市長が一体化構想に参加しないことを表明。
2022年11月 生駒市が市民説明会を開催。
2022年11月 奈良市の協議会離脱を踏まえ、大和郡山市の参加を促すため持ち寄り資産のルールを作り、同市営昭和浄水場(水源、地下水)を存続する方針を県が固める。
2022年12月 葛城市が市民説明会を開催
2022年12月 葛城市の阿古和彦市長が市議会・県域水道一体化調査特別委員会で不参加を表明。
2022年12月 大和郡山市の上田清市長が参加を表明。
2022年12月 26市町村長が一体化参加を回答期限の26日までに書面で協議会に通知。 関連記事へ