「神武天皇が日本を建国された奈良県」 山下知事、来県中の上皇夫妻との懇談伝えるツイートで
上皇夫妻との懇談について伝える山下知事のツイート
山下真奈良県知事は上皇夫妻が来県中の5月17日、夫妻と懇談の機会があったことを捉えて、ツイッターに「神武天皇が日本を建国された奈良県には先人が守り抜いてきた貴重な歴史文化遺産が多数あることから、地元知事としてそれを守り抜いていくことをお誓い申し上げた」などと投稿した。知事は神武を巡る歴史について物語と史実を区別しようとしなかった。
ツイッターの投稿の全文
並河天理市長さんと共に、約10分、両陛下とご歓談する時間を頂戴しました。私からは、神武天皇が日本を建国された奈良県には先人が守り抜いてきた貴重な歴史文化遺産が多数あることから、地元知事としてそれを守り抜いていくことをお誓い申し上げると共に、天皇家ゆかりの飛鳥・藤原京を世界遺産に登録すべく尽力していることをお伝え致しました。
投稿は17日夜で、県秘書課によると、知事はこの日、上皇夫妻の視察先だった天理市の県施設なら歴史芸術文化村で夫妻と懇談したという。
神武天皇による日本建国は、奈良時代に作られた歴史書の日本書紀、古事記に基づくが、神話的色彩が濃い。日本書紀によると、神武が初代天皇に即位したのは紀元前660年。当時、日本は縄文時代でもあり、神武そのものの実在性が疑われている。事典類や学校の日本史の教科書も史実としては取り上げていない。
一方で毎年2月11日の「建国記念の日」になると、ツイッター上には保守派の政治家が神武天皇即位の年を元年とする皇紀を挙げて記念日をたたえる投稿がいくつも見られる。
また、荒井正吾前知事は2020年3月の県議会予算審査特別委員会での平城宮跡整備を巡る委員との質疑応答で「天皇家はずっと続いており、現在、第126代(神武から数えて)。第50代までは奈良におられたが、天皇が奈良におられた最後の都の跡が平城宮跡であることを県民にもっと知ってほしい」と述べていた。
山下知事のツイッターのフォロワーは約5500人。神武天皇に関する記述に言及して投稿を批判する「返信」は見られなかった。
「奈良の声」は5月18日正午前、山下知事個人のウェブサイトで公開されているメールアドレスに質問を送った。神武天皇に関する記述は史実として述べたのか尋ねた。また「地元知事としてそれを守り抜いていくことをお誓い申し上げた」と述べたことについても、日本は国民主権の国、さまざまな歴史文化遺産も国民、県民の財産であり、誓う相手が違うのではないかと尋ねた。19日夕方現在、知事からの連絡はない。
山下知事は弁護士で、4月の知事選に日本維新の会公認で立候補し初当選した。