奈良公園の鷺池でたまった泥取り除く 本格工事39年ぶり
浚渫工事が進む鷺池。古い樋門(左)が姿を見せている=2024年2月16日、奈良市高畑町の奈良公園
檜皮(ひわだ)ぶきの浮見堂で知られる奈良市高畑町の奈良公園の鷺池で、池の底にたまった泥を取り除く浚渫(しゅんせつ)工事が行われている。普段は見られない池の底があらわになり、古い樋門(ひもん)も姿を見せている。
公園を管理する県が昨年12月、工事に着手した。鷺池の表面積は1万1000平方メートル。水質改善が目的で、川から流れ込み底にたまった泥2290立方メートルを取り除いた。西隣の荒池(元はかんがい池、現在は洪水調整池)に通水する池底の底樋と呼ばれる管まで掘り下げるのは1985年以来、39年ぶり。
池の上流部は、世界遺産の春日山原始林。流域には天然記念物の鹿を保護する鹿苑があることなどから、池には土砂が流入するだけでなく、相当量の鹿のふんが入り込む。臭気やアオコの発生を抑制することが課題という。
工事は今月下旬に完了する。3月から池の水が張られ、同月後半には水遊びのボートがこげる状態になる。近隣の片岡梅林も間もなく見頃。
県奈良公園事務所は「来月、予定通り水が張られると、樋門操作などにより底樋を利用できる可能性があるのか分かるはず。底樋が使えれば、水を抜く際にポンプでくみ上げるより合理的」と話している。
鷺池は明治30年代、県が奈良公園の改良を目指し、川上村の大林業家、土倉庄三郎らの意見を聞いて、一部人工美林への樹種展開を計画した際、併せて景観形成の水辺として1905(明治38)年に築造された。20年後の大正時代、近隣に転居してきた志賀直哉の小説にも出てくる。