入り口に表示なく 奈良公園に県が整備の日本庭園 一般公開始まるも
一般公開が始まった瑜伽山園地の日本庭園入り口の門。表示が何もない=2020年5月24日、奈良市高畑町
瑜伽山園地の日本庭園の園内=同
奈良県が奈良市の県立都市公園「奈良公園」の高畑町裁判所跡地に、高級宿泊施設の誘致と併せて整備した日本庭園「旧山口氏南都別邸庭園」の一般公開が24日始まった。しかし、入り口に庭園の表示はなく、一般公開していることを示す案内もなかった。
県は21日、開園について記者発表するとともに、お知らせを県のホームページに掲載した。開園日時、場所、入園料、地図、交通などが示されていた。
庭園は、明治から大正にかけて同所に別邸を構えていた大阪の財閥、山口家の日本庭園の遺構を生かして、復元整備した。竹林や木立の中に池や滝、茶室があり、石敷きの園路などが巡っている。開園時間は午前9時から午後10時まで、入園料は無料とした。宿泊施設と庭園を一体で整備し、一帯を「瑜伽山(ゆうがやま)園地」と名付けた。
同園地は築地塀で囲まれていて、庭園の入り口は北側、浮見堂で知られる鷺池に面した通り沿いに、切り妻屋根の和風の門がある。しかし、表示は何もなく、庭園の名称も、一般公開している庭園の入り口であることも、入園料が無料であることも示されていない。庭園の存在を知らずに現地を訪れた観光客には、見学できる施設があることが分からない。
この日、午前11時台の来園者はまばらだった。新型コロナウイルスによる外出自粛の影響がまだあるためか、奈良公園のほかの場所の人出も多くなかった。
子供連れで訪れた市内の若い夫婦は「入り口がすぐに分からなかった。庭園の歴史を知りたいと思ったが、園内には案内図や説明板もなかった」と話した。開園は、インターネット上の情報で知ったとした。
夫婦が訪れたのは夕方で、記者が午前中に訪れたときは、入り口で係員が来園者に庭園のパンフレットを配っていた。
また、市内の別の男性は入り口に表示がないことについて、「オープンしたばかりだから」と推測した。
県の高畑町裁判所跡地活用事業では、広さ1万3000平方メートルの県有地を都市公園に編入。南半分に富裕層を狙った高級宿泊施設を誘致、北半分に庭園を整備した。公園施設でありながら利用者が限られる高級宿泊施設の誘致を巡っては、県は一般公開する庭園こそが主役と強調してきた。
宿泊施設「ふふ奈良」と、同園地の北東角に設けられた交流・飲食施設は6月5日の開業予定。交流・飲食施設の運営者は宿泊施設と同じ。両施設の客はその敷地から直接、庭園との間を行き来することができる。【続報へ】