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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

奈良の玄関口、大宮通りの花壇撤去 前知事時代のもてなし取り組み、また一つ姿消す

花壇が撤去された大宮通りの交差点=2024年3月12日、奈良市三条大路5丁目(写真の一部をぼかしています)

花壇が撤去された大宮通りの交差点=2024年3月12日、奈良市三条大路5丁目(写真の一部をぼかしています)

 奈良県は、車で奈良市を訪れる観光客の玄関口となる大宮通り(県道奈良・生駒線)の一角に設置していた花壇を撤去した。荒井正吾前知事が「玄関口にふさわしく」と整備を指示したものだった。県は「観光客増につながっているか効果を測れない」とする。県は、県庁玄関ホールで実施していた香をたくサービスも昨年5月の知事交代を境に廃止している。前知事時代のもてなしの取り組みがまた一つ姿を消した。

 花壇は大宮通りの入り口となる同市三条大路5丁目の交差点の東南角地にあった。広さ約100平方メートルで、曲線で区画された敷地内にベンチや照明が整備され、パンジーやビオラが植えられていた。「ようこそ大宮通りへ」と大書された歓迎の看板も立っていた。

完成当初の大宮通りの花壇=2014年10月、奈良市三条大路5丁目

完成当初の大宮通りの花壇=2014年10月、奈良市三条大路5丁目

 花壇が設置されたのは2014年。同所はそれまで空き地で、広告の骨組みだけが放置された状態になっていた。当時の県への取材では、荒井前知事は「大宮通りの入り口にああいう空き地があると、奈良の印象を悪くする」として整備を指示したという。県は空き地を所有者から借りて花壇を設置した。

 撤去工事は3月中に完了した。県道路マネジメント課長補佐は撤去の理由について「県民から、花植えも良いが傷んだ歩道の補修にお金を使った方が良いとの声が寄せられていた」とした。加えて、花壇が大阪行き車線側にあり、市中心部に向かう奈良行き車線側からだと見えにくいという点も挙げ、「観光客へのもてなしで始めたが、増加につながっているかどうか効果を測れない」と述べた。

大宮通りの歩道に配置されていた花のプランター=2024年3月12日、奈良市

大宮通りの歩道に配置されていた花のプランター=2024年3月12日、奈良市

 県は花壇の設置と併せて大宮通りの歩道に並べていた花のプランターも撤去した。花壇の辺りから市中心部までの約3.1キロメートルの区間に183個を配置、パンジーやビオラを植えていた。

 花壇とプランターはいずれも県の「大宮通り植栽・修景整備事業」の一環。同事業にはこのほかに冬季の大宮通りを彩るイルミネーションが含まれているが、これについても2023年度は中止した。2013年度から毎年、11月から3月までの期間に実施してきたが、県民から花壇などと同様の声があったという。

 荒井前知事時代に編成された2023年度の当初予算では、実施を前提に同事業の費用約6300万円が計上されていた。内訳は花壇とプランターが約4100万円で花壇土地の賃借料、年2度の花の植え替えと水やり作業の業者への委託料など。イルミネーションが約2200万円だった。

 県は昨年5月に就任した山下真知事の下、荒井前知事時代の事業の見直しを進めている。2024年度から取り組む「ならの道リフレッシュプロジェクト」では、県の道路の維持管理の強化を図る。この中で大宮通りについては、道路美化を目的に歩道の舗装修繕や防草対策を実施するとしている。

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