チューリップフェア、看板の株数を減らす 奈良馬見丘陵公園で4月開催 前知事「100万株目標」増やし続け
昨年の馬見チューリップフェア=2023年4月、奈良県営馬見丘陵公園
公園事務所「数より配置で効果的見せ方を」
奈良県は県営馬見丘陵公園(河合町、広陵町)で4月に開催する第11回馬見チューリップフェアで、看板にしてきたチューリップの株数を減らす。「材料費、人件費の高騰」を理由に挙げている。荒井正吾前知事の「目標は100万株」の号令の下、株数を増やし続け、昨年のフェアでは65万株を誇った。今回は8万株少ない57万株で、県中和公園事務所は「数より配置で効果的な見せ方を考える」としている。
同公園は広さ56.2ヘクタール。なだらかな丘陵に木立や草地が広がり、大小4つのため池がある。園内の随所に花壇や花畑を設け、四季を通じて花を楽しめるようにしている。
チューリップフェアは2014年に1回目が開催された。当時の案内ちらしによると、このときの株数は20万株。以降、毎年10万株ずつ増やし2017年には50万株に。2019年ごろから「関西最大級」を看板に掲げ、2022、23年は65万株まで増やした。花畑は公園の全域にわたった。
9日間のフェア期間中はさまざまな催しがあり、2022年の期間中の入場者数は10万7900人。同年度の年間入場者数116万2000人の約1割を占めた。
今回のフェアは4月6日から14日までで、株数に代わる宣伝文句として「関西最大級! 約140品種のチューリップ」を掲げている。
昨年5月までその職にあった荒井前知事の時代の県政の目標を定めた「奈良新『都』づくり戦略」(2022年度版)は、同公園について「誇らしい花の公園に整備」との方針を示していた。中でもチューリップについては、2019年9月の県議会定例会で「目標は100万株」と述べるなど、前知事の思い入れがあった。
県中和公園事務所は「(球根などの)材料費や(植え付け作業の)人件費の高騰と県予算との兼ね合いから株数の見直しを行った」と述べる一方、植栽に関し「数を減らすだけでなく配置で効果的な見せ方を考える」とした。「目標100万株」に対しては「難しいと考えている。公園内は植栽だけでなく、くつろぐ広場も必要」と否定的な考えを示した。
地元の野鳥愛護団体「野鳥にやさしい馬見丘陵公園をめざす会」の事務局を務める竹下栄さんは、県がチューリップの株数を減らしたことについて「良いこと」と歓迎した。「めざす会」は、同公園について自然が豊かでたくさんの野鳥が見られるとし、花壇や花畑の拡大は野鳥が生息できる場所を狭め、その種類や数を減少させかねないと懸念、県にも指摘してきた。
竹下さんは「花の数を増やして誇るのはイベント偏重の発想。人と野鳥、自然の共生が感じられる公園にすべき」と訴えた。 続報へ