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浅野善一

ヘイトスピーチ規制条例の制定を 奈良県に市民団体が罰則盛り込んだ案

奈良県の担当者(右手前)に条例案を提出して要望を伝える「ヘイトスピーチ規制条例制定を実現する会」の人たち=2024年5月15日、県庁

奈良県の担当者(右手前)に条例案を提出して要望を伝える「ヘイトスピーチ規制条例制定を実現する会」の人たち=2024年5月15日、県庁

 市民団体「奈良県ヘイトスピーチ規制条例制定を実現する会」(加来洋八郎代表)は5月15日、山下真知事と岩田国夫県議会議長に宛てて同条例制定を求める要望書と条例案を提出した。全国では神奈川県川崎市などに同種の条例がある。

 同会は、さまざまな社会問題に取り組む県内16の市民団体で組織。要望書提出の背景について、インターネット上では人種や国籍、民族などを理由にしたヘイトスピーチ(憎悪表現)が収まらず、ヘイトによって起きる犯罪が県内外で頻発していると説明。その上で、罰則も規定した差別禁止法の制定が急務とし、まずは県として差別を許さない姿勢を明確にしてほしいとしている。

 同会が条例の内容として求めているのは、性別や障害などを含む差別全体に取り組む条例にすること▽罰金や加害者の氏名公表を含む制裁規定▽被害者からの通報受け付けと救済のための独立した第三者機関の設置▽インターネットのモニタリング(監視)など。

 この日は、加来代表ら同会の関係者8人が県庁を訪問。知事宛ての要望書提出に当たっては県人権施策課長らが対応。議長宛てについては議会事務局が要望書を受け取った。会の要望に対し、人権施策課長は「(表現に対し)実務としてどこに線を引くか、かなり難しい。他府県の状況を勉強させてもらっている」などと答えた。

 同会は県議会の6月か9月の定例会に条例案が提案されることを目指している。昨年8月から5回にわたり学習会などを開き、準備してきた。加来代表は要望書提出後の会見で「ヘイトがどうすればなくなるのか。罰則などの仕組みを作らないといけない」と話した。

 ヘイトスピーチを巡っては、奈良県議会は2014年、衆参両院議長や内閣総理大臣などに提出する「ヘイト・スピーチ(憎悪表現)に反対しその根絶のため法規制を求める意見書」を全会一致で可決した。

 2016年、ヘイトスピーチ解消法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)が施行されたが、内容は相談体制の整備、教育の充実、啓発活動などで罰則規定はない。川崎市の条例は罰金などの罰則規定が盛り込まれている。

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