「生活保護のしおり」点検 エアコン購入費支給など、改善指導申し入れ 奈良県に「よくする会」
奈良県への「生活保護のしおり」の改善申し入れ後、記者会見する「奈良県の生活保護行政をよくする会」の古川弁護士ら(右端)=2025年8月21日、奈良市中筋町の奈良弁護士会館、浅野善一撮影
福祉関係者や識者らでつくる「奈良県の生活保護行政をよくする会」(代表世話人・古川雅朗弁護士)は、福祉事務所を設置する県内自治体の「生活保護のしおり」が正確で分かりやすい情報提供を行っているかどうかを点検した結果をまとめ、8月21日、県に対し、「誤った記載」など「不適切」な内容については改善を指導するよう申し入れた。
「よくする会」はこの日、県への申し入れ後、奈良市の奈良弁護士会館で記者会見を開いた。
「生活保護のしおり」は、生活保護の相談者向けの制度の案内書で、各自治体がそれぞれ作成している。同様の県への申し入れは2022年11月から3度目。今回の点検は、2024年に改定された生活保護問題対策全国会議のチェックシートを使用して行った。
福祉事務所を設置しているのは12市、十津川村、県(同村を除く町村の生活保護事務)の14自治体。それぞれの「しおり」について、生活保護が「憲法25条の生存権保障に基づく制度であることが説明されているか」や「資産が一切認められず、すべて処分しなけれならないような(誤った)記載がないか」、また「扶養義務者の扶養」について「扶養(仕送り)があればその分、保護費を減らすだけの意味であることが説明されているか」など40項目にわたって採点した。
最も点数が高かったのは天理市で45点、最も低かったのは十津川村でマイナス17点。市で最も低かったのは奈良市でマイナス6点だった。
「よくする会」は2022年から「しおり」の点検と各自治体への改善の申し入れに取り組んでおり、2022年の点検時と比べると「大きく改善されている」という。改善された主な項目としては、高校生のアルバイト料について控除の扱いがあることが説明されている「しおり」が1件から11件に増えたことや、保護費の返還について自立の観点から免除される場合があることが説明されている「しおり」がゼロから5件に増えたことを挙げている。
県への申し入れでは、125cc以下のバイクの保有は原則認められることや、保護開始時などにエアコンがない場合、購入費が支給されることの説明が多くの「しおり」で不十分―など4項目について指導を求めた。
また、橿原市の「しおり」については、相談者の生活状況などの確認のため「市内にお住まいの三親等内扶養義務者についても原則ご自宅に訪問」と記載していることに対し、生活保護制度上の扶養義務者は原則として直系血族兄弟姉妹であると指摘。「看過しがたい重大な誤りを含んでいる」として、市に速やかな改定を申し入れたことも明らかにした。
「よくする会」の古川弁護士は「生活保護のしおり」について「生活保護が権利であるにもかかわらず抑制的に働くことがあってはならない」と述べた。
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