奈良県内自治体の「生活保護のしおり」 点数化し課題点検 「よくする会」が県に是正指導申し入れ
「奈良県の生活保護行政をよくする会」が点検した奈良県内自治体の「生活保護のしおり」と点検結果について会見する同会の人たち=2022年11月2日、奈良市の奈良弁護士会
奈良県内で生活保護利用者らの支援活動などに取り組む人たちでつくる「奈良県の生活保護行政をよくする会」(代表世話人・古川雅朗弁護士)は、福祉事務所を設置する県内全自治体の「生活保護のしおり」の内容を点数化し課題を点検、11月2日、荒井正吾知事に集計結果を提出、是正指導を申し入れた。
「奈良県の生活保護行政をよくする会」による奈良県内自治体の「生活保護のしおり」の点検結果の一部 表全体を表示(同会提供)
「生活保護のしおり」は、生活保護の申請を考えている相談者向けの制度の案内書。生活保護の事務を行う福祉事務所を設置する自治体が個別に作成している。
同会は、「生活保護のしおり」の役割について「生活に困窮した市民と生活保護制度をつなぐ架け橋となる重要な資料」であり、「コロナ禍で生活困窮者が増大している中で、セーフティーネットである生活保護制度の広報を正しく行うための重要なツール」とする。
一方で、生活保護利用者の支援活動などに取り組む中で、各自治体の「生活保護のしおり」の記載に問題があることが分かってきたという。
点検した「生活保護のしおり」は、奈良など12市と十津川村、県の計14冊。昨年11月から今年6月にかけて収集した。十津川村を除く県内町村は県の中和、吉野の2福祉事務所が管轄している。
点検に当たっては、生活保護問題対策全国会議が作成した「生活保護のしおり」チェックシートを基に、「憲法25条の生存権保障に基づく制度であることが説明されているか」など41項目にわたって、明確な説明がある(プラス2点)▽項目のみ(プラス1点)▽記載なし(マイナス1点)▽誤りまたは誤解を招く記載(マイナス2点)ーの4段階で点数化、合算した。
同会は点検結果の特徴として、扶養照会は履行が期待できる扶養義務者だけにすればよいが、それが分かる記載をしていない自治体が8割に上った▽居住用不動産の保有は可能なのに明記は2自治体のみ▽125cc以下のオートバイの保有は可能なのに明記は2自治体のみ▽年金などのまとまった収入があった場合、自立のための費用は控除できるのに記載している自治体はゼローなどを挙げた。
自治体間の点数の比較では最高点は14点、最低点はマイナス28点となり、大きな開きがあった。生活保護の申請手続きや各種控除・免除など権利に関する記載や、保有が認められている資産に関する記載が明確な自治体は、点数が高かったという。
同会は今後、各自治体の福祉事務所に対しても、点検で見つかった「課題」を送付し、修正の検討を要望する。
古川弁護士は県への申し入れ後に行った会見で点検の狙いについて、「調査結果として各自治体のしおりに改善すべき所があると考えた。こうした問題があること、また今の社会情勢の中で生活保護制度が市民にとって重要な権利であることを広く知っていただきたい」と語った。
「奈良県の生活保護行政をよくする会」の連絡先は事務局の飯尾大彦さん、携帯090-3846-8213または電子メールhiko1213@nike.eonet.ne.jp