昨年5月の観光戦略会議で言及 知事、近鉄奈良駅前行基広場に屋根
荒井正吾知事が昨年5月の県の観光戦略会議で、近鉄奈良駅前の行基広場への屋根設置に言及していたことが12日までに分かった。荒井知事が屋根設置に関心を示した格好だが、この段階では願望にとどまっている。県は同年の9月補正予算で大屋根のデザインや規模、材質など具体的な検討に着手した。しかし、担当の県道路・交通環境課内部ではそれ以前から屋根設置の議論があったといい、知事が言及したのを機に検討を始めたわけではないとしている。大屋根をめぐっては、県の事業の進め方に批判が出る中、計画の決定に至る経緯に関心が集まっている。
観光戦略会議は県庁内に設けられている分野別会議の一つ。知事、観光にかかわりのある部局長、課長が構成員となる。記者は平成21年度1年間分の議事録を情報公開制度に基づき開示請求した。5月26日の会議の議事録の中に、荒井知事が屋根設置に言及した部分があった。
「宿泊観光の増大に向けて」をテーマにした議論の中で、荒井知事は「宿泊や滞在に向けての取り組みはよいが、歓迎ムードがない。近鉄奈良駅は多少良くなったが、(中略)歓迎場所となる駅構内以外の公共的な広場としては、行基菩薩のところまでない。そこに屋根を付け、ここで情報を取ってほしいと言いたくなる不十分な到着駅」と述べた。
道路・交通環境課によると、県は平成19年度、外部識者や奈良市職員を交えた近鉄奈良駅前道路景観整備委員会で、沿道景観を軸に同駅周辺の改善に向けた基本方針を検討。記録はないが、屋根設置の意見も出たという。以後、課内部では屋根設置の議論はあったという。その上で「知事は思いを述べたのであり、屋根設置を指示したわけではない」とし、荒井知事の言及がなくても、了承を得て計画は進めていたと説明している。