奈良県の報道資料のHP掲載、1日遅れ改め配布当日に 記者クラブへの配慮は見直し
奈良県のホームページ。報道発表資料が1日遅れで掲載される
奈良県が県政・経済記者クラブに提供している報道発表資料の県ホームページへの掲載をクラブへの配布の翌日に行っていることに対し、「ニュース 奈良の声」が配布と同時の掲載に改めるよう申し入れていた問題で、県は1日までに、配布当日に掲載する方法に改めることを決めた。
これまで一般県民やクラブに所属しないメディア、フリーランスの取材者は、県の記者発表を翌日の新聞報道などで確かめるしかなかったが、こうした1日遅れの状況は解消される。インターネットの発達で記者クラブだけが優先的に行政の発表資料を入手できる時代ではなくなった。
県広報広聴課によると、同記者クラブには新聞、テレビなど15社が加入。県庁5階に1室が割り当てられている。報道発表資料は予算など県の施策にかかわるものから行事のお知らせまでさまざまあり、各部署から随時、クラブへ配布される。その数は年間で2000件以上になる。しかし、県のホームページへの掲載は、配布翌日の午前中に行われてきた。
翌日掲載はクラブとの申し合わせによるもので、同課内でこのルールを申し送りしてきた。ホームページへの掲載を遅らせるのは、翌日の新聞朝刊の情報価値が下がらないようにとの配慮と推察され、クラブ側の意向を反映したものとみられる。
「ニュース 奈良の声」はこうした翌日掲載には理由がないと考え、昨年9月3日、「県が提供する情報を入手する機会は一般県民やクラブに所属しないメディア、フリーランスの取材者にも等しく保障されなければならない」として、県広報広聴課に配布と同時の掲載を申し入れた。同課はこの際、「一存では決められない。記者クラブにも諮らなければならない」と回答した。
同課は県としての対応を検討した結果、「申し入れには妥当性がある」と判断、当日掲載に改める方向で進めることを決めたという。記者クラブに対し、フリーランスの取材者から申し入れがあることを伝え、県のこうした見解を示した上で意見を求めたところ、同意を得られたという。
当日掲載への切り替えは早ければ今月初めのうちに実施する。掲載の時間は、クラブへの配布が緊急の場合を除き原則として午後3時までとなっているため、例えば午後4時ごろに一斉に掲載する方法などが考えられるという。
藤山清志・県広報広聴課係長は「一石を投じてもらったこともあり、慣行的になっていた翌日掲載のルールをあらためて見直し、このたびの結論に至った」としている。
隣接の府県では昨年9月の段階で、大阪府と滋賀県が記者クラブへの報道資料配布当日にホームページに掲載している。一方、京都府、和歌山県は翌日掲載。兵庫県は当日掲載だが、時間は午後10~11時。三重県は翌日掲載だが未明の午前零時。京都、和歌山の各広報課は、ホームページへの掲載が翌日の朝刊が配達されるタイミングであるとした。特に和歌山は新聞への配慮であることも認めた。兵庫と三重県は掲載が夜間になる理由についてコンピュータシステムの都合などを挙げた。【続報へ】