奈良県内の市町村職員などの退職手当支給事務を行っている県市町村総合事務組合(管理者、小城利重・斑鳩町長)が、退職手当基金の運用を目的に投機性のある仕組債を買い、元本割れにより20億円の損失を出した問題に対し、上牧町が12月定例議会の答弁で、地方自治法を逸脱しているとの見解を示していたことが26日までに分かった。組合は元本割れについて、過去に基金運用で得た利息の範囲内とし、損失と認めていない。負担金を支出している市町村などで、組合とは異なる見解が明らかになるのは初めて。
答弁があったのは先月11日の定例議会一般質問。木内利雄議員(民主)が問題を取り上げた。特別地方公共団体である組合の基金運用について木内議員は、地方自治法241条で「確実かつ効率的に運用しなければならない」と定めているが、元本割れを起こすような運用はこれを逸脱しているのではないか、とただした。これに対し、田中一夫総務部長は「おっしゃる通り」と答えた。
このほか、田中総務部長は、元本割れによる損失を知ったのは昨年9月22日付の新聞報道で、組合から「報道に対して」という名目で正式な報告があったのは11月12日の事務担当者会議だったとした。元本割れが発生したのは2010、11年度だが、新聞報道以前には組合から知らされていなかったことがはっきりした。「奈良の声」は新聞報道に先立つ、6月15日に第1報を掲載している。
一方、今中富夫町長は、損失についてどう考えているのかとの質問に対し、組合は全国の同種の組合に比べると、市町村の退職手当負担金を低く抑えてきたため、資金不足に陥り、基金を取り崩さざるを得なくなったもので、やむを得ない措置だったと考えていると答え、組合に理解を示した。
木内議員はまた、元管理者の岡井康徳・河合町長が「奈良の声」の取材に対し、「取材を受けるまで仕組債という言葉すら知らなかった」と答えたことを取り上げ、組合のマネジメントに首をかしげざるを得ないと批判、「損失は基金全体の収益でカバーできる」としている小城町長にその根拠をただし、結果を議会に報告するよう求めた。また、組合に対し、外部監査を入れるよう提言してもらいたいとも求めた。
今中町長は対応を約束した。
上牧町の退職手当負担金は2011年度が約8130万円、12年度は負担率が引き上げられ約5880万円の増となるため約1億4000万円となる見通し。