奈良県:奈良市西ふれあい広場計画発端の土地、寄付申込書に鉛筆書き 公文書で不自然
奈良市の西ふれあい広場計画で市土地開発公社に不必要な土地を高額で先行取得させたのは違法として、市を相手取り、当時の大川靖則・元市長らに損害賠償請求するよう求めた住民訴訟の第4回口頭弁論が10日、奈良地裁であり、計画の発端となった土地の寄付申込書の記入の一部が鉛筆書きだったことが明らかになった。原告側が指摘した。修正が容易な鉛筆書きは公文書の常識に反しており、不自然だ。
鉛筆書きだったのは寄付の条件・理由を記入した部分で、原告側は「寄付の目的について後に記載をいかようにも変更できるようにしておく必要があったため」と指摘、「寄付を受けることを決定した時点で利用目的が決まっていなかったことは明らかで、寄付を受ける正当な理由は存在しなかった」と主張した。
寄付者は市内在住。土地は同市二名7丁目の山林にあり、広さ約2000平方メートル。進入路がなかったことから、周辺の土地を買い足して西ふれあい広場にする計画に発展したが、周辺土地の所有者もほとんどが寄付者の一族だった。
市障がい福祉課が保管する、寄付者あての寄付採納通知によると、寄付の申し込みは1991年7月10日、採納決定は同16日。寄付申込書は当時の西田栄三市長あてで、記入欄は「寄付の目的物」「寄付の条件」「寄付の理由」「寄付の年月日」の4つ、最後に寄付者の住所、署名、押印がある。
同課は口頭弁論後の取材で、鉛筆書きがあることを認めた。「寄付の目的物」を「土地 奈良市二名町字別所430番の3」とした部分と寄付者の住所、署名はボールペン書きだが、「寄付の条件」を「障害者の福祉のため」とした部分と、「寄付の理由」を「障害者福祉に寄与したい」とした部分は鉛筆書きだった。「寄付の年月日」は記入がなかった。
原告側は、これらの記入欄の筆跡が寄付者の住所、署名の筆跡と異なっているとも指摘した。記者が入手した同土地の寄付採納に関する文書のうち、職員が作成したとみられる寄付明細書の筆跡と似ており、記入は職員だった可能性もある。
市公有財産規則は、市が寄付を受けるときはその理由を明確にするよう定めている。市が寄付を含めて公有財産を取得しようとするとき、取得しようとする公有財産の明細や取得の理由、相手方の住所・氏名などを記載した書類を作成し、市長の決裁を受けなければならないとしている。また、寄付の場合、決裁の際に寄付申込書と寄付採納通知書案を添付するよう義務付けている。
市総務課によると、公文書を作成する際の筆記具を定めた決まりはないが、市職員用の文書事務の手引きは、公文書を作成するときは文書の内容、性質などに適した方法を取らなければならないとしており、修正が容易で証拠能力がない鉛筆は常識的に考えて不適切という。
原告側は「寄付申込書の記載をボールペンと鉛筆で書き分ける必要はないため、ボールペン部分と鉛筆部分は明らかに意図をもって書き分けられているとみるのが自然」と主張している。
市障がい福祉課は「鉛筆書きになっている理由は分からない。公文書の記載は簡単に消えないもので行うよう指導を受けているが、当時のことは分からない」とした。
寄付を受けた土地については、担当だった市厚生課内部に「土地は単独では使えない」との認識があったことが、当時の関係者へのこれまでの取材で明らかになっている。同土地の寄付採納の起案文書は厚生課が作成しているが、市として寄付を受けることが決まった後、担当とされた。このため、課としては寄付を受けるかどうかの検討をしていないという。
記者はこれまでに、市情報公開条例に基づいて同土地の寄付採納に関する文書の開示を受けていたが、複写の交付だったため鉛筆書きを確認できなかった。
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