奈良県)奈良少年刑務所の保存運動団体が勉強会 高野口小学校重文指定の経験、神吉教授に聞く
高野口小学校の保存運動に関わった経験について語る神吉紀世子教授=2014年11月30日、奈良市手貝町の同町会館
明治のれんが建築、奈良少年刑務所(奈良市般若寺町)の重要文化財指定を目指す「近代の名建築 奈良少年刑務所を宝に思う会」(山下洋輔会長)が11月30日、同市手貝町の同町会館で勉強会を開いた。神吉紀世子・京都大学大学院工学研究科教授(都市計画)から、高野口小学校木造校舎の保存運動、重文指定に関わった経験について聞いた。市民ら約20人が参加した。
和歌山県橋本市の市立高野口小学校校舎は1937年の完成で、全国の木造現役小学校舎では最大級とされる。保存か建て替えか、10年に及ぶ議論の末に2014年1月、重要文化財に指定された。神吉教授は和歌山大学助教授時代に保存運動に関わった。
神吉教授によると、阪神・淡路大震災後にPTAから建て替え要望があり、承認されていたが、地元の商工関係者らがまちづくりの視点から保存を提案したという。自主グループのまちづくり協議会などが町歩きや見学会を企画してきた。一方で、最も困っている人の話を聞こうと、学校の先生に、経年劣化による設備の不具合などを抽出してもらうことにも取り組んだ。保存改修の基本設計案作りには先生やPTA、児童も参加した。
運動で気を付けたこととして「意見の異なる住民や関係者との間に溝をつくらない」「建て替え、保存すべての案を公平に評価する」などを挙げた。また、外部主体は建物の所有者に末永く協力していく決意が必要とした。重文指定に当たっては、地域の支援が付いていると評価されるとした。
神吉教授は奈良少年刑務所の保存運動について「奈良は古代の歴史遺産だけでなく、各時代の遺産を総合的に取り上げ、まちの全体性について認識を広めることで、いろいろな関係者の業績にもなっていく形になると力強い」と提案した。
参加者からは耐震性や防火の問題をどう解決したのかなどの質問があった。神吉教授は「建築基準法に合わなくても別の方法で安全を確保できればよい」と解説した。