大和郡山で城下町の町家生かした町づくり考える 町歩きや講演・意見交換会に市内外から参加者
城下町の町歩きで町家を見学する参加者=2016年3月13日、大和郡山市内
城下町の町並みが残る奈良県大和郡山市で13日、市内の歴史的建造物を生かした町づくりを考える町歩きと講演・意見交換会があった。県建築士会郡山支部城下町大和郡山建物探訪部会(徳本雅代部会長)が、約6年を掛けて取り組んだ町家調査の結果を踏まえて実施した。市内外から参加した人たちとともに、城下町を未来につなぐ手立てを探った。
大和郡山は中世末期、豊臣秀長が基礎を作り、江戸時代には大和一国の政治経済、文化の中心として栄えた。同部会は2010年から、郡山城城下町の核となった「箱本十三町」と呼ばれる区域を中心に、建物を1軒1軒確認する悉皆(しっかい)調査を実施。江戸から昭和まで各時代を象徴する、残したい50軒を選んだ。このうち、所有者らに承諾を得られた16軒について、建物の概要、現況、特徴、暮らしの様子を記録、冊子にまとめた。
午前に行われた町歩きには約40人が参加した。同市本町の横田家住宅(建造1806年、当初の用途・両替商)では、城の堀に面して敷地奥に設けられた船着き場跡などが関心を集めた。このほか、大正後期の西洋風建築、杉山小児科医院や、格子戸の玄関の内側に吹き抜けの坪庭がある、昭和初めの松田家住宅など、それぞれに個性のある建物の魅力に触れた。
市内から参加した葉本英明さん(66)は自身も築130年の町家に暮らしており、「他の古い家がどんな構造になっているか関心があった」と話す一方、保存や活用については「建物が劣化していく中で、修繕費用の負担は重い」と悩みも語った。
午後の講演・意見交換会は同市洞泉寺町の元遊郭建物、旧川本家住宅(登録有形文化財)で行われ、約45人が参加した。基調講演は、兵庫県篠山市で古民家の再生などに取り組む建築家才本謙二さん。同市には城下町の町並みなど二つの伝統的建造物群保存地区があるが、才本さんは篠山について「本当の魅力は日常の暮らし」と紹介。古民家再生については資金の工面や回収が難しいとし、カフェやレストラン、ホテルとして活用することが大事と説いた。
同部会の町家調査の報告もあった。徳本部会長は、「箱本十三町」区域の大正までの町家の数について、1981年の大和郡山市の調査と今回の調査を比較、「50%がなくなっていて驚いた」と述べた。一方で、調査により、特徴のある町家を発掘できた成果などを挙げ、100年先の大和郡山のまちを見据え、これからも聞き取り調査や調査結果のパネル展示に取り組んでいきたいとした。
このあと、県内、市内のまちづくり団体の関係者や市内の町家所有者らも加わって、意見交換などが行われた。【関連記事へ】