県庁横の歩道撤去、地元自治会への車道拡幅工事のお知らせ文書に説明なく 配布も着工直前
県奈良公園事務所が着工1カ月前に地元自治会に配布した通行規制のお知らせと図面。同事務所が開示した(写真の一部を加工しています)
奈良県庁西側の奈良市道において2015年3月、県が車道拡幅のため歩道を撤去したところ、危険な車道を歩く人が後を絶たないという状況が続いている問題。県が当時、地元自治会に車道拡幅を伝えたのは着工直前の1カ月前で、内容も工事に伴う車の通行規制のお知らせだったことが、県の開示文書から分かった。お知らせ文書に歩道撤去の説明はなかった。歩道利用者不在の進め方ではなかったか。
「奈良の声」は県情報公開条例に基づき、県が15年1月19日~3月20日に実施した同車道拡幅工事やこれに伴う歩道撤去について、地域住民や自治会に対し、工事前後・期間中に配布したお知らせの文書を開示請求した。
これに対し県は、工事担当の県奈良公園事務所が地元3自治会あてに作成した、図面付きの文書2件を開示した。
1件は、着工1カ月前の14年12月15または17日付の「車線拡幅工事に伴う北行き車線の通行止めについて」、もう1件は、工事終了間際の15年3月5または6日付の「車線拡幅工事の今後の予定について」。着工前の文書「通行止めについて」は、工事の目的、期間、迂回(うかい)路に関する説明だった。いずれの文書も、車道拡幅に伴って歩道が撤去されることには触れていなかった。
県は、奈良公園を訪れる観光バスの乗降などの拠点として、県庁東側に登大路バスターミナルを計画しており、ターミナルを利用するバスの通行に対応するため車道を拡幅。これに伴い、約100メートルにわたって歩道を撤去した。歩行者については、市道西側の県文化会館広場通路に誘導している。
2013年には歩道撤去の検討図面
県が歩道撤去の検討を始めた時期は不明だが、県が13年7月31日に開いた奈良公園地区整備検討委員会で配布したターミナルの検討図面では、車道が拡幅され歩道がなくなっている。
自治会長の一人の男性(45)は、歩道の撤去や広場通路への誘導については、同事務所の担当者が文書を持ってきたときに口頭で説明を聞いたとした。男性は「ターミナルができれば車道拡幅は必要だろう。歩道撤去に対しては、住民から苦情が出るかと思ったがなかった。車で通る人が多く、歩く人は少ない」と話した。一方で「県庁ができたときからある歩道なので、なくなると不便と感じる住民もいると思う」とも推測した。
別の自治会の自営業男性(79)は、工事終了後に初めて歩道がなくなっていることに気付いた。「あれ、歩道がない。どこへいったのか」と思ったという。ただ、歩道については「あれば通るが、私の周り方はもともと文化会館広場を通っている。皆さんとは、歩くのは広場通路でいいと話している」と語った。
奈良公園事務所の担当者は取材に対し、自治会へのお知らせ文書に歩道撤去の説明がなかったことについて、「歩道がなくなることを書けばよかったが漏れてしまった。車線が一つ増えるので、その説明内容から認識してもらえたのではと思う」と説明した。
歩道撤去をめぐっては、工事終了間際の15年3月、県の意見コーナー(県ホームページで公開)に対し、県民から「歩道があった所を今でもたくさんの人が歩いていて、とても危ないので、歩道を設置してほしい」との声が寄せられている。当初なかった広場通路への誘導看板は、この意見を受けて設置された。同8月にも「歩行者の安全を軽視するのか」「歩道復活を」との2件の声が寄せられた。
歩道撤去区間の南側には奈良公園や興福寺、北側には住宅地のほか文化会館や県立美術館、民間の観光駐車場がある。「奈良の声」が、連休の日曜日となった15年9月20日に車道を歩く人を数えたところ、1時間当たりで105人に上った。ゴールデンウイークの同5月3日日曜日の調査でも、1時間当たり65人の歩行者を確認した。
県警は本年度、この問題で、文化会館広場通路に歩行者を誘導するため、撤去区間南側の信号のある県庁西交差点に横断歩道を増設する。【続報へ】
【写真は4月15日に追加】