捕食)獲物の習性を熟知/連載 野鳥~自然を生きる知恵・与名正三…4
水面からコイを引き上げるミサゴ
海岸でフナムシを捕らえたキアシシギ
浅瀬でアカエイを捕らえたアオサギ
地上でミミズを捕らえたズグロミゾゴイ
中学校の校庭で昆虫を捕らえたサシバの若鳥
この地球で暮らす全ての生き物は、日々食事を取らなければ生きてはいけません。中でも鳥類は生態系の上位にいるため、他の生き物を捕らえて食べる種類もたくさんいます。したがって、これらの野鳥たちは、捕らえる獲物の住環境や習性を熟知していないと、捕食することは困難です。
例えば、海岸の岩場で暮らす「キアシシギ」は、波打ち際でフナムシや小魚などを捕らえて暮らしますが、波が岩場に打ち寄せた後、引き波によって取り残された獲物に素早く飛びつき捕らえています。
また、海岸の浅瀬や池の縁などに生息する「アオサギ」は、主に水面近くにいる大きな魚などを獲物としています。砂浜の波打ち際を歩きながら水面を凝視し、エイやボラなどを見つけると急いで駆け寄り、長い大きなくちばしで素早く獲物を捕らえます。
アオサギは海辺だけに限らず、内陸の池や沼周辺などにも生息しています。そのような場所で獲物を捕食する場合は、池や沼の縁でじっと水面を見つめ、獲物の出現を待ちます。そして、コイやフナが水面に顔を見せた瞬間、くちばしで串刺しにして捕らえます。
沖縄諸島に分布し、農耕地の茂みなどに暮らす「ズグロミゾゴイ」は、芝地や畑の縁をゆっくりと歩き、地表にミミズが顔を出したところを、長いくちばしで引っ張り出し捕らえます。ズグロミゾゴイは、畑の縁の湿った環境にミミズが多いことを知っているようです。
また、里山の猛禽(もうきん)「サシバ」はカエルやヘビを捕らえて生活しているため、田んぼや畑、ため池付近で獲物を探しています。しかし、越冬地の奄美群島や沖縄諸島では、近年、カエルやヘビが少ないため民家のアンテナや電柱に止まり、獲物を見つけると降下して、道路の縁にいるカマキリやバッタ、ベンケイガニなどを捕らえています。
最近、学校の校庭などにも出現し、芝生に潜むケラやカタツムリなどを捕食しています。獲物の少ない離島では、さまざまな生き物を餌としなければ、生きていけないようです。
海岸近くに生息し、大きな魚をダイビングして捕らえる猛禽「ミサゴ」は潮の満ち引きに合わせ、大きな川の河口と上流を行き来し、上空から獲物を探します。ミサゴは内陸のため池にいるコイも捕食しますが、まれに捕らえた獲物の方が大きく水中に引っ張り込まれ、死んでしまう場合もあるようです。
このように捕食の例をいくつか紹介してきましたが、厳しい自然の中で、食べられる方(非捕食者)も食べる方(捕食者)も必死なのです。温暖化などによって地球環境が刻々と変化する中、野鳥たちにもこれからの時代を生き抜く、多くの知恵や知識、環境の変化に対する適応能力が求められるのではないでしょうか。(よな・しょうぞう=野鳥写真家、月1回更新予定)