ニュース「奈良の声」のロゴ

地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
ジャーナリスト浅野詠子

関西広域)大阪府吹田市の人形芝居専門劇場「出口座」の70体、市立博物館が保存

「出口座」の人形を守ってきた山下さん方を訪ね、操ってもらった=2017年10月7日、大阪府高槻市内

「出口座」の人形を守ってきた山下さん方を訪ね、操ってもらった=2017年10月7日、大阪府高槻市内

展示場でよみがえる「出口座」の人形たち=2019年10月2日、大阪府吹田市岸部北4丁目の市立博物館

展示場でよみがえる「出口座」の人形たち=2019年10月2日、大阪府吹田市岸部北4丁目の市立博物館

 大阪府吹田市出口町に44年前、旗揚げした人形劇専門劇場「出口座」(2000年廃業)の糸あやつりなどの人形約70体がこのほど、同市岸部北4丁目の同市立博物館に保存されることが決まった。劇場を営んだ大正生まれの阪本一房さんが2001年に死去した後、志を継承する弟子の人形遣いの同府高槻市内の自宅で大切に守られていた。

 人形を造形し、自ら操った阪本さんは、地元吹田市に伝わる民話を積極的に題材として求め、台本を書いた。市立博物館副館長の藤井裕之学芸員は「人の話しを介して伝わってきた民話そのものを資料として保存することは難しいが、これを演じる人形たちが残されていたことは大変貴重であり、博物館が保存することは意義がある。糸あやつりの技能者を育成していくことが課題です」と話す。

 細い路地にあった客席30席の「出口座」は、芝居小屋というにふさわしい小劇場だった。年間32公演を果たした記録が残る。阪本さんの没後、高槻市内の自宅で人形を守っていた弟子の人形遣い山下恵子さん(65)は、郷土の児童文化活動に打ち込んだ阪本さんたちの足跡を末長く伝えてくれる保存施設を探し、大学の付属機関など各方面の関係者らと交渉を続けていた。

ゆかりの戦前の緞帳も

 阪本さんの遺族から昨年5月、山下さんに託されていた戦前の緞帳(どんちょう)も市立博物館に寄贈された。これは1935年、大阪市天王寺区で旗揚げした新興人形劇団「大阪人形座」のもの。一座の中心メンバーである音楽家小代義雄をはじめ、人形を作った彫刻家浅野孟府らの薫陶を阪本さんは戦後ほどないころに受けており、阪本さんの人形はどこか欧風のモダニズムが宿るといわれる。

 人形、緞帳のほか台本や案内ちらし、新聞記事など計300点ほどの寄贈資料が9月下旬までに搬入を終えた。

 寄贈された人形の一部はさっそく、学芸員資格を目指す近畿の学生たちの実習活動に活用され、今月6日まで「大学生による館蔵品展」(有料)で見学することができる。

 山下さんは「人形たちが最高の形で保管されることになった。公開され、市民の文化遺産として残ることが本当にうれしい」と話している。

読者の声

comments powered by Disqus