ニュース「奈良の声」のロゴ

地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

新規ニュース掲載のお知らせ メールでお届け(無料)

ジャーナリスト浅野詠子

奈良・佐保川の治水ダム建設、県の次期河川整備計画も見送り方針 予備調査から48年

佐保川ダム建設の予備調査が行われたとみられる付近。写真の右手が右岸に当たる=2020年4月2日、奈良市中ノ川町

佐保川ダム建設の予備調査が行われたとみられる付近。写真の右手が右岸に当たる=2020年4月2日、奈良市中ノ川町


 奈良県が1972年、奈良市中ノ川町付近の佐保川上流で予備調査を開始した後、凍結状態になっている佐保川ダムの建設が、県が定める次期整備計画においても見送られる方針であることが分かった。

 治水を目的に掲げた予備調査から48年。長らく凍結状態にあっても、ダム事業は復活することがある。近隣の事例では、滋賀県の大戸川ダム(国土交通省)は新知事の方針により凍結から一転、建設容認が話題になっている。

 佐保川は世界遺産・春日山原始林に源を発し、万葉集の歌枕としても名高い。延長15キロ。下流の川西町付近で大和川に合流する。河川法に基づき、向こう20年間を見通して佐保川などの河川工事の基本方針を定める「奈良県河川整備計画平城圏域」(奈良市、大和郡山市、天理市内の県管理河川)の次期計画策定のめどとされる2022年が近づいてきた。

 県河川課は「2002年策定の河川整備計画は5年ごとに見直しをしており、佐保川ダムの建設は検討しなかった。次期河川整備計画においても建設はあり得ない」と話す。

 県は現在、佐保川の大宮橋付近(奈良市内)で親水護岸工事を進めている。いわば不要不急の公共事業を象徴しており、「市街地の洪水被害を防ぐ」と説明した上流のダム建設計画との整合性は失われつつある。

 佐保川ダム計画について、凍結に至った理由などが記載された公文書はほとんどないといわれる。県は1999年、県民向けパンフレット「大和川水系における奈良県のダム―大和あおがき治水システム」において、佐保川ダム建設の必要性を書いていた。しかし5年後に策定した河川整備計画には盛り込まなかった。

 一方、ダムの計画地付近に位置する山林は、平城宮跡(国の特別史跡)で操業していた工場の移転先として、奈良市の用地買収機関「土地開発公社」が91年から94年にかけ16ヘクタールを、計約100億円を投じて買収したものの、2000年、計画は破綻した。工場移転計画は県が主導したもので、ダム開発との一貫性を著しく欠いている。

 佐保川は、秋篠川との合流地点から下流は国土交通省の直轄区間になる。同じ大和川水系において、かつて県が明日香村に計画し、国庫補助事業として採択された飛鳥ダムは2000年、旧建設省の事業評価監視委員会の勧告を受けて中止になった。関義清村長(当時)はダムが飛鳥川の砂防につながるとして容認していた。

 この年は、元建設相・亀井静香自民党政調会長(当時)の提案により、国や県、水資源開発公団の40ダムが中止になり、県営6ダムの国庫補助金が停止された。佐保川ダムは下流住民の建設要望があった。国交省近畿地方整備局によると、大戸川ダムも凍結中、下流の市町村から整備を促進する要望があった。

 県河川課は「大和川水系の平城圏域では、他の河川の河道の流下不足を補う対策などが急がれ、佐保川の治水工事の優先順位は高いとは言えない」と話している。

読者の声

comments powered by Disqus