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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

買収山林、22年間放置 奈良市の旧体育施設事業用地 活用見通しなく

活用の見通しのない旧体育施設整備事業用地の山林付近=2020年4月、奈良市

活用の見通しのない旧体育施設整備事業用地の山林付近=2020年4月、奈良市

奈良市の旧体育施設整備事業用地地図

 奈良市が1998年、体育施設整備を理由に、事業用地の先行取得を担う市土地開発公社(2013年解散)に約3億6300万円で買収させた同市横井町の山林約3万8000平方メートルは、現在まで22年間にわたり利用されず、今後の具体的な活用のめども立っていないことが分かった。買収費は市の借金として残った。

 当時の市長、大川靖則氏が1998年2月13日の日付で土地開発公社への用地取得依頼を決裁していた。土地開発公社は市の外郭団体となるため、市民の目が届きにくい。ホッケー場を中心とした体育施設が検討されたといわれるが、急傾斜地を含み、道路に面していないなど、開発に適さない点が複数あった。

 市の第三者委員会、市土地開発公社経営検討委員会(委員長、出水順弁護士)が2011年3月、まとめた報告書によると、市の火葬場計画(当時)に対する沿道住民説得への協力と引き換えに、この山林を買い取るように持ち掛けた人物がいたという。

 同委員会は報告書で、近年の実勢価格の30倍を超える値で買収したとし、「特定の個人の便宜を図る趣旨で取得したのではないか」と指摘したが、仲川元庸市長は調査を見送った。市議会も調査特別委員会などは開かず、当時の大川市長らは説明責任を果たしていない。

 火葬場候補地として1995年ごろに浮上していたのは同市鹿野園町の山林とみられ、数年で立ち消えになった。

 問題の山林は、現在、市が横井町内で建設を進める火葬場予定地から南西に約500メートルの地点。未利用地を生かす目的で、新火葬場の候補地にはならなかったのか。市新斎苑建設推進課は「旧体育施設事業用地は、開発するには適さない急傾斜地にあり、進入路もなく、まったく検討しなかった」と説明する。

 市民がスポーツに親しみ、健康づくりに寄与するという体育施設整備事業は幽霊計画に等しかった。事業がまったく進まなかった分、用地取得時に土地開発公社が金融機関から借り入れた金の返済が遅れて金利が膨張し、買収金額に約7000万円を上乗せした簿価、約4億3800万円が市の財政負担になった。土地開発公社の債務は解散後、市に移っている。

 現場は、国道169号を2キロほど東に入った奧深い山林で、人が容易に立ち入ることはできない。ごくまれに東海自然歩道の山道を散策するハイカーらが近くを通る。市市民部スポーツ振興課は「何も活用しておらず、今後どう活用するかも検討していない」と話す。 関連記事へ

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