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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

缶圧縮施設の許可審議、是正指導の一件触れず 2017年、奈良県が大和郡山市都計審に付議

 奈良県大和郡山市が家庭ごみの缶・瓶のリサイクル作業を委託している業者の缶圧縮施設が2016年まで無許可だった問題で、当時、業者が是正指導に応じて許可申請を行い、県がこれを受けて市都市計画審議会に諮った際、是正指導の一件には触れず、施設の新設として説明していたことが、「奈良の声」が市に開示請求して得た審議会議事録から分かった。

 市は、市内の家庭ごみの収集業務のうち、不燃ごみ、粗大ごみの収集と、一部地域の可燃ごみの収集、収集した不燃ごみのうちの缶・瓶のリサイクル作業を、随意契約で毎年、大和郡山市環境事業協同組合(同市大江町)に委託している。リサイクル作業では、集めた缶・瓶を選別、資源化する業者に売却している。

 市清掃センターによると、2016年8月、市街化調整区域にある同組合の施設建築物が建築基準法の建築確認を受けていないとの指摘が外部からあり、これを受けて調べたところ、圧縮施設についても廃棄物処理法に基づく県の一般廃棄物処理施設設置許可を受けていなかったことが判明した。

 組合は同年9月、市の是正指導に応じ、圧縮施設の使用を中止するとともに違法建築物を撤去、敷地をいったん更地にし、あらためて圧縮施設の設置許可申請と施設建築物の建築確認申請を行った。

 一般廃棄物処理施設は、都市計画法で都市施設として都市計画決定の対象となっている。一方、建築基準法はその建築について、都市計画決定したものか、または都道府県などの特定行政庁が市町村の都市計画審議会の議を経て、都市計画上、支障がないと許可したものに限り認めている。

 組合の施設は都市計画審議会の承認が必要な場合に当たり、県は市都市計画審議会に付議した。審議会の委員は20人で学識経験者、市議、郡山署長、県郡山土木事務所長で構成され、会長は春名攻・地域マネジメントセンター代表理事。

 審議会は2017年8月24日に開かれ、議事録によると、会議の冒頭、上田清市長は「組合が施設の改修の必要に迫られている中で、缶の圧縮を行う施設を新設する」とあいさつ。県建築課(現・建築安全推進課)の担当者は、既存の缶・瓶の選別施設の敷地に新たに事務所棟や圧縮施設を設置すると説明した。

 委員からの圧縮施設の1日当たりの処理能力に関する質問に対し、同課の担当者は「もともとこの施設は手作業の分別のみをされてまして圧縮をしていないんで、処理能力が全くなかったものが5トン以上の処理能力を占めるようになった」と答えている。議案は賛成17、反対0で承認された。

 組合は、市から是正指導を受ける前年8月まで、30年近くにわたって無許可の状態で圧縮施設を稼働させていた。「奈良の声」は県建築安全推進課と市都市計画課に対し、審議会で是正指導の一件に触れなかった理由を尋ねた。また、不十分な情報に基づく審議会の議決は正当性を失うのではないかと質問した。

 県建築安全推進課は「組合から申請を受け付けた段階で敷地に建築物はなく、是正は完了していた。その上で新しく設置するもの。あえて伏せるとか伏せないとかいう次元のものではない」と話した。

 市都市計画課は文書で回答、「是正指導による違法建築物の撤去は確認しており、審議会の開催時には違法状態は解消されていた」とした上で、「ご指摘の通り、不十分な情報では正当性を失いかねないので、引き続き十分な内容の議案書提示とその説明に努めるとともに、委員からの意見や質問に真摯(しんし)に対応していく」と述べた。

 一方、市議の枠で任命された当時の委員の一人で、議会で缶・瓶の売却益の扱いについて取り上げたこともある北野伊津子前市議は取材に対し「いったんやめて是正している。審議としては、過去の経緯を理由にだめだということにはならないと思う」と話した。

 市が市議会に対し、組合の施設が無許可だったことを明らかにしたのは審議会から1年近くのちの2018年6月19日。同日の産業厚生委員会で委員から指摘を受けて認めた。 関連記事へ

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