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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

県域水道一体化構想 奈良市長が参加見送り表明 単独経営の更新投資で強靱化目指す

一体化への参加見送りを表明する仲川げん奈良市長=2022年10月4日、同市役所(浅野詠子撮影)

一体化への参加見送りを表明する仲川げん奈良市長=2022年10月4日、同市役所(浅野詠子撮影)

 奈良県内27市町村の水道と県営水道を統合する県主導の県域水道一体化構想を巡り、奈良市の仲川げん市長は4日、「現時点では、一体化への参加を見送る」と市役所で開いた記者会見で表明した。

 市長は「市の水道経営は安定している。県最終提案の追加財政支援などでは市民の利益につながらない。単独経営でも投資と料金のバランスを考慮し、今まで以上に投資し、老朽化・耐震化対策を進めることは可能」と述べた。

 一体化は荒井正吾知事肝いりの「奈良モデル」の一環。給水人口の3割を占める奈良市の不参加により、水道広域化構想の地図は大きな塗り替えが迫られそうだ。

 会見によると市は前日3日午後5時ごろ、一体化への不参加を県に通知した。県の担当者は「抜けられるのですね」と淡々と対応したという。2025年度の企業団(一部事務組合)設立と、それと同時の統一料金を目指す県広域水道企業団設立準備協議会に奈良市は今後、出席する予定はない。

 仲川市長は一体化構想について、「用水供給事業(主水源、吉野川の大滝ダム)を担う県が一番メリットを受ける。広域化は有効な手段と認識するが、政令市や中核市の都市部の水道が広域化への参加を見送る傾向がある。小規模な市町村の水道を都道府県がけん引する広域化も行われている」と説明した。

 奈良市営水道は大正時代の創業で今年9月、給水開始から100年を迎えた。戦後は人口増に対応するため積極的に水資源を開拓し、計600億円に上る水源2ダム(布目川の布目ダムなど)の建設負担金の支払いが2021年、すべて完了している。

 市長は「これまで以上に積極的な施設の耐震化を図ることで、強靭(きょうじん)かつ持続可能なライフラインを次世代に引き継ぐ」と、更新投資の考え方を示した。ゆとりある自己水をもとに周辺自治体などとの広域連携に協力する意欲も見せた。

 一体化推進の業務を司る県水道局の西野浩行局長は3日、県市議会議長会と同町村議会議長会が県域水道一体化をテーマに開いた合同研修会で「奈良市が参加しない場合でも、県域水道一体化は進める」との県の姿勢を示した。 関連記事へ

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