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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

生活保護申請の第三者同席「不適切」 奈良県香芝市、議会で答弁 「親族など本人以外の個人情報聴取する場面も」理由に

香芝市役所=2022年10月、同市本町

香芝市役所=2022年10月、同市本町

 奈良県香芝市は9月7日の市議会定例会代表質問で、生活保護申請時の第三者の同席について「個人情報保護の観点から不適切」との考えを示した。市は「親族など本人以外の個人情報を聴取する場面もあり、職員が個人情報漏洩(ろうえい)を問われる恐れがある」と強調した。同市はこれまでも市議会議員の同席を認めておらず、生活保護問題に取り組む団体などから市に対し、議員の同席を認めるよう求める声が上がっている。

 川田裕議員(無所属の会、議長)の質問に総務部長が答えた。川田議員は「生活保護申請では、本人だけでなく家族など関係者のいろいろな情報が輻輳(ふくそう)している。正当な理由のある同席者ならいいが、そうではない場合、本人の確認があったとしても、第三者がそれ以外の情報を知り得る状況にある。(個人情報漏洩には職員に対する)罰則もあり、行政が責任を問われる」として、市の考え方をただした。

 これに対し総務部長は「生活保護申請に関する事情聴取では、世帯員の所得、親族などに関することなど、本人以外の情報を聴取する場面も多分にある。聞き取りを実施するのは市であることを考えると、職員による個人情報の間接的漏洩に当たる恐れがある」とした上で、「本人以外の親族などの情報が明らかにされることについて、親族などの同意がない限り違法の疑いがあり、現実にこのような同意を取ることは困難」との見解を示した。

 一方、続いて質問に臨んだ青木恒子議員(共産)は「議員の同行については、本人のプライバシーの保護の観点から配慮が必要なのであって、本人が望めば(行政が)同席を拒む理由はないというのが厚生労働省の回答」と述べ、「(窓口で)うまく説明できない相談者を議員が補助、申請時に必要な書類の用意を代行する。審査に加わるわけではない。不安な方に寄り添う活動。本人の意思に基づいて同席するものについて見解を尋ねる」と福岡憲宏市長に聞いた。

 福岡市長は「申請権の侵害はあってはならないが、同時に個人情報も守っていかなければならない」と答えた。

 青木議員は「全国でも奈良県でも、議員同席を認めないというのは香芝市だけ。厚労省の見解は上位の規定。大事にしていただきたい」と注文した。

 同市の議員同席を巡る問題は、2021年12月の市議会福祉教育委員会で、国民健康保険料や生活保護の窓口への同行を巡る川田議長の発言に青木議員が反論したことが発端。議会はこの発言を捉えて2022年12月、青木議員に出席停止4日間の懲罰を科した。青木議員はこの懲罰について、市を相手取り損害賠償請求訴訟を奈良地裁に起こしている。

 また、一連の問題を受けて結成された香芝市生活保護問題調査団(団長、吉永純花園大学教授)は市に対し、議員の同席に関する見解などを求める申し入れを行った。

 今年3月にあった市の回答は「生活保護法や厚生労働省の通知では申請時の同行を禁止する定めはなく、市議会議員以外の支援者の同行は断っていない」と述べていた。議員については「市議会において市政治倫理条例に抵触する行為とされていることから、議会の意見を尊重し、同席は遠慮いただいている」としていた。 関連記事へ

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