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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

南和広域ごみ処理施設の跡地問題 企業から譲り受け希望の相談あった 奈良県大淀町が議会に経緯説明

大淀町役場=2023年9月21日、同町桧垣本

大淀町役場=2023年9月21日、同町桧垣本

 奈良県大淀町など4町村でつくる南和広域衛生組合(管理者・辻本眞宏大淀町長)の9月30日で操業を終えるごみ処理施設「南和広域美化センター」(同町芦原)の跡地利用を巡り、敷地所有者の同町が随意契約で地元企業に売却する方針を決定していることについて、町議会は同月21日、全員協議会を開いて町に説明を求めた。町は、当初に企業側から組合に対し施設の事務所や車庫の譲り受けを希望する相談があったことを明らかにした。

 地元企業は同センターと同じ芦原で事業を営む徳本砕石工業。この相談から1年後の今年3月、町と同社、南和広域衛生組合、芦原区の4者は、土地と建物の譲渡条件などを定めた基本合意書を締結した。同社が焼却炉棟を除く同センターの施設を本社事務所などに再利用するとしていることから、組合は施設の撤去費用を抑える効果が期待できるとしている。

 一方、地方自治法では地方公共団体の売買などの契約は一般競争入札が原則であることから、全員協議会では特定の企業を前提にした跡地利用やこの間の経緯について質問が相次いだ。

 建設環境部長の説明によると、同社から組合に相談があったのは2022年3月ごろで、操業を終えた後の同センターの事務所や車庫などを売ってもらえないかとの意向が口頭で示されたという。これに対し組合は、地元芦原区との取り決めで操業終了後は施設をすべて撤去することになっている上、敷地の中に個人地があって建物の一部がその上にあることから譲れないと伝えたという。

 その上で、同部長は「この企業は芦原区の総会に出向き、自らの企業努力によって(同社が施設を再利用することについて)了承を得て、個人地についても購入にかじを切って(所有者に)働きかけたという流れがある」と述べた。

 この「個人地」は組合が賃借していたが、所有者から第三者への売却の願い出書が提出され、今年1月、徳本砕石工業に転売された。辻本町長は、転売を承諾した理由について「(契約条件は引き継がれることから)組合の安定性を脅かすことはなかった。弁護士にも相談したが、売買まで制限はできないとのことだった」と説明した。

 また、一般競争入札を選択しなかったのは「入札になじまない場合は随意契約の規定があり、今回の案件は性質や目的が競争入札に適さないと認定した」とし、その理由として「敷地の一部は徳本砕石工業が取得済みで、残りは不成形な土地。落札の見込みがない」と述べた。

 芦原区は昨年12月、町と組合に対し、同センターの跡地と施設を徳本砕石工業に利用させ、地域振興や地元活性化につなげてほしいとする願い出書を提出している。

 全員協議会では、町の説明の受けて「納得できない」「一度立ち止まれないのか」との意見も出た。一方で町の方針に賛成する意見もあった。地元芦原区の議員は「区民は大淀町民であることを第一に迷惑施設を40年間引き受けてきた」とした上で、徳本砕石工業が町に根差した企業であることを強調、同社への跡地の売却について「4者1両得」の名案とし、「前に進めてほしい」と述べた。

 別の議員は町の方針を支持しつつ「経緯を知らずにこの話を聞いたとき“(売却先)ありきか”と痛くもない腹を探られないよう広く理解、納得を得られるようにしておいてと、今年2月の全員協議会町で申し上げたのに、町が半年間、放っておいたからそう思われるようになってしまった」と述べ、この間の町の対応を批判した。

 岡向正道議長によると、この9月の定例会決算・予算審査特別委員会で、跡地の売却を巡って議論が白熱、同委員会の時間内に収まらなかったことから、町に対しあらためて全員協議会での説明を求めたという。全員協議会は通常、非公開にしているが、町民の関心もあって公開で開催、町のケーブルテレビでも本会議などで実施しているのと同様に中継した。

 町と組合は基本合意書締結に先立って今年2月、それぞれの議会の全員協議会で同合意書案を示して、同社への売却方針を明らかにした。本年度末のそれぞれの議会での売買契約締結承認の議決と契約締結を目指している。

 施設の撤去費用は、組合を構成する大淀町、下市町、黒滝村、天川村と途中で脱退した高取町がごみの持ち込み量などに応じて分担。大淀町は最も多い約53%を負担する。組合は同社への売却による撤去費用の削減効果額を約1億8000万円と算定している。 関連記事へ

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