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ジャーナリスト浅野詠子

関西広域)「大阪人形座」の戦前パンフレットが現存 新興人形劇の息吹伝わる 大津の私設図書館所蔵

「大阪人形座」のパンフレット=2023年12月19日、滋賀県大津市坂本8丁目の「人形劇の図書館」

「大阪人形座」のパンフレット=2023年12月19日、滋賀県大津市坂本8丁目の「人形劇の図書館」

 戦前の関西で新興人形劇の草分け的存在だった「大阪人形座」のパンフレットが、滋賀県大津市坂本8丁目の「人形劇の図書館」(私設、潟見英明館長)に現存していた。パンフレットからは当時の劇団の息吹が伝わる。

 「大阪人形座」は前身の「トンボ座」を経て1935年、大阪市天王寺区大道で旗揚げし、戦時下の体制によってわずか5年余りの活動で解散命令を受けた。

 パンフレットは1935年4月10日発行で縦16.5センチ、横13.5センチ、8ページ。タイトルは「人形座」、第1号を意味する「第1輯(しゅう)」の記述がある。表紙には、メンバーらが糸あやつり人形を操作する写真が使われている。

 掲載されているのは、劇団が旗揚げした同年1月から4月までの10回にわたる公演活動。小山内薫原作の「三つの願い」や日本民話「文福茶釜」などを、百貨店や新聞社の講堂で上演した様子が写真付きで紹介されている。

 裏表紙には俳優や画家らメンバー6人の氏名がある。浅野孟府は前衛的な大正期新興美術運動で活躍し、後に大阪府大東市内にアトリエを構えていた彫刻家。利光貞三は、孟府のアトリエに彫刻を習いにきていた青年で、戦後は東宝映画「ゴジラ」の怪獣のひな型を製作した。小代義雄は音楽家。近代新興人形劇の先駆けは100年前、小代や舞台美術家の伊藤熹朔らが東京都内の民家で試演した人形劇といわれる。

 「大阪人形座」が当時、16ミリ人形映画を制作中だったこともパンフレットの記述から分かった。

 童話作家、須古清氏のメッセージも載り「舞台効果、照明、音楽の伴奏まで不断の工夫と努力が払われ、まったく立派な総合児童芸術」と評価している。

 潟見さんは20年ほど前、東京都千代田区神田神保町の古書店でパンフレットを入手した。大阪府吹田市立博物館が昨年、同市内で人形劇場を営んでいた阪本一房の特別展を開催した際、パンフレットを展示した。

 「大阪人形座」は1940年、戦時下の反体制活動と見なされて取り締まりを受け解散を余儀なくされた。潟見さんによると戦後まもない頃は、自由な文化活動を待ちわびていた若者らによって、国内ほとんどの大学に人形劇サークルが誕生したという。「政治家と違って人形は裏も表なく、うそを言わない。人形劇には真実があり、現代にあって役割はますます高まる」と話している。

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