県立奈良病院移転予定の県住宅供給公社所有地、宅地開発目的に取得、地価下落で評価損41億円

2011年10月4日 浅野善一
↑元六条団地予定地に立つ県住宅供給公社の立ち入り禁止の看板=奈良市七条西2丁目
↑県立奈良病院が移転する奈良市六条山地区の県住宅供給公社所有の山林。上が北、左は富雄川=県提供
販売用不動産の強制評価減 日本公認会計士協会は2000年、企業の会計監査を行う際の販売用不動産の取り扱いについて、企業会計原則に従って、時価で評価することを決めた。これに伴い、貸借対照表に記載する販売用不動産の価格は、取得価格ではなく、時価とすることが必要になった。地価下落で生じた土地の含み損による損失の計上を、先送りさせないことを狙いとした。強制評価減を適用する判断基準は、下落が50%以上の場合とした。(2011年11月16日追加)

 県立奈良病院移転予定地の奈良市六条山地区の県住宅供給公社所有地の評価額が、宅地開発を目的に取得したときの費用の3分の1まで下落し、それに伴う評価損が41億8000万円に上っていることが、同公社への取材で分かった。同土地は、バブル景気で地価が最も高騰した頃に買収が始まっており、48億円が投じられた。さらに、取得時の借入金の金利などを加えた簿価は最大で58億円4000万円に上った。しかし、バブル崩壊で地価は下落に転じ、計画は中止。最新の不動産鑑定で評価額は16億6000万円まで下がった。

 宅地開発は六条団地として計画され、同市七条西2丁目と石木町にまたがる、大半が山林の丘陵12.8ヘクタールを造成して、262区画の分譲住宅を販売する予定だった。同公社は90年3月の理事会で計画を決定。91年に買収を始め、98年までに計画の約8割にあたる10.7ヘクタールを60人の地権者から計48億円で取得した。

 しかし、県の地価調査によると、県内の地価は90年を頂点に下落に転じた。計画当初の97年9月の試算では、1区画当たり宅地面積200平方メートル以上の分譲住宅を6800万円で販売、16億7000万円の収益が見込まれるとしたが、実際にはバブル崩壊後で見通しは不透明に。98年1月の理事会で計画の一時中断を決定した。

 その後、2010年6月の理事会で正式に中止を決めた。このときの試算では、土地分譲のみに切り替え、現在の近傍の完成宅地単価を参考にした1平方メートル当たり70500円で販売することを想定したが、14億8000万円の赤字が見込まれた。中止の理由は「需要好転が見込めない」「民間住宅の市場が充実してきた」「住宅戸数が世帯数を上回った」とされた。

 この間、地価の下落は続き、貸借対照表上の資産価額をそのときの価値を反映したものとすることが必要となり、01年度、同土地の評価の見直しを実施、評価額を48億円から24億2000万円に下方修正。さらに、04年度の鑑定で16億6000万円に修正した。

10年越しの塩漬け解消

 県立奈良病院の移転が決まったのは2011年6月。六条団地予定地は98年の計画の一時中断以降、事実上、塩漬け状態になっていた。県新奈良病院建設室は同土地を選定した理由について「北和における拠点病院として、同地域内での立地のバランスやアクセス、まとまった土地の確保を考えたときに、適地として浮かび上がった」と説明。移転が10年越しの塩漬けの解消につながることについては「選定の際の要素の中にはあったかもしれないが、目的ではない」とした。

 同公社は1965年、県が出資して設立された。理事長は知事または副知事が務めてきたが、現在は荒井正吾知事。理事は県の土木部長や総務部長らが務めている。

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