奈良県:奈良市給食費、学校ごとの私会計から市の公会計に 滞納の督促、教委の責任で

2013年9月26日 浅野善一

 奈良市は、市立小中学校の給食費を現在の学校ごとの私会計から市の公会計に切り替えることを決めた。徴収は市教育委員会の責任で行われることになる。2014年度の実施を目指す。市は13年度から中学校での給食実施を順次、進めているが、実施に先立って、現場から、滞納者への集金が負担になるのではと不安の声が上がっていた。滞納対策を理由に給食費を公会計にする動きは全国的にあるという。県内では生駒市や香芝市が公会計にしている。

 保護者が給食費として負担しているのは食材費。学校給食法では、調理設備や調理員などの経費は市など学校の設置者の負担で、食材費は保護者の負担としている。

 市教委保健給食課によると、市の給食費は月額で小学校3900円、中学校4560円。学校ごとに口座引き落としなどの方法で徴収し、食材を一括購入している市運営の財団法人、市学校給食会にそれぞれ直接納めている。学校ごとの独立会計のため、滞納があると、学校単位でやりくりしなければならず、当月の不足分を次月の徴収分で補う自転車操業になることもあるという。滞納者に対しては担任や教頭、校長が家庭訪問して督促することもあるという。

 公会計になると、給食費は市の一般会計の収入となり、同会計から支出して食材を購入することになる。現在、市の給食費の総額は年間約8億円という。食材購入は給食費収入の範囲で行われるが、不足すれば市が補てんすることもあり得る。徴収の方法は従来の口座引き落としの方法を引き継ぐ予定。滞納者に対しては市教委が督促状や催告状を送ることになる。次の12月定例市議会に関連条例を提案する予定。

 同課によると、小中学校を合わせた給食費の滞納は2012年度が73件約152万円(13年4月末現在)。08~12年度5年間の累積額は約548万円に上る。公会計化後、滞納者に対する債権を、学校から引き継げるかどうかが懸案という。

 同課が11年、中学校での給食実施を前に実施したアンケートでは、教職員の3分の2が給食実施に反対し、主な理由の一つが「給食費徴収の困難が予想される」だった。 市教委は、第三者委員会の市立中学校給食導入検討委員会での「給食費の滞納が懸念される」との議論を受け、従来の学校単位で教員が集金する方法に変わる新たな集金方法を検討していた。

 香芝市は給食費と修学旅行費用を公会計にしている。公会計化の目的には、修学旅行であれば、全員参加を行政として保証しようというのもあるとしている。「払わない人の分を、払った人の分で賄うのは良くない」としている。

 一方、生駒市は約40年前の給食開始時から公会計にしている。当初は特別会計で現在は一般会計。市学校給食センターによると、滞納は09~12年度の4年間の累積額が約150万円となっているが、公会計は滞納対策と関係ないとした。市は給食の質を保つため、市費から支出して給食費収入に上乗せしているという。

 奈良市が先行事例として参考にしたのは大阪府豊中市や兵庫県西宮市という。

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