ニュース「奈良の声」のロゴ

地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

Loading

発行者/奈良市・浅野善一
フリージャーナリスト浅野詠子

奈良県)精神保健福祉の課題伝えた「マインドなら」が3月で廃刊 障害者の生活支援に向き合い21年

ことし3月で廃刊する「マインドなら」

ことし3月で廃刊する「マインドなら」

小林時治さん

編集に尽力した小林時治さん

 1994(平成6)年に創刊され、精神障害者の生活支援に向き合い、行事予定や行政課題などをつぶさに伝えてきた月刊紙「奈良県精神保健福祉ジャーナル・マインドなら」(A4判8ページ、1部100円、発行部数1400部)がことし3月で廃刊になる。編集の中心だった小林時治さん(82)が社会福祉法人「萌(もえ)」(大和郡山市小泉町)の理事長に就任し、両立が難しくなったため。後任を探していたが、手弁当で取材、執筆できる専従は見つからなかったという。

 「マインドなら」は、大和高田市内に開設された県内3カ所目の精神障害者の作業所に関わる人たちが、情報発信を模索する中で生まれた。精神障害にまつわる身近な課題を拾っていたが、次第に全県が取材対象になり、法令や制度の改正などを丁寧に検証してきた。印刷代などは、精神障害者の相談・就労支援を行う県内2つの社会福祉法人「萌」と「寧楽ゆいの会」が支援してきた。商店街の店主らも年賀広告を出して応援した。

 小林さんは産経新聞出身で、県精神障害者家族会で活動してきた。取材活動の一環として行政文書を情報公開請求することもあり、県内精神病院に対する県の立ち入り検査の結果を実名で載せていた。

 また、身体障害者や知的障害者には適用されながら、精神障害者は除外されていた県内路線バス運賃の助成問題を98年ごろから追い掛けた。精神保健福祉手帳に基づく半額運賃が実現するまで、当事者と家族の運動は11年余りに及んだ。最近では、県が拡充した、医療保険制度の自己負担額助成について、県内12市の実施見込みを詳報している。

 紙面は、当事者が新婚生活などの日常についてありのままをつづった温かなエッセーの連載や家族会からの活動報告、精神科ソーシャルワーカーによる寄稿、研究者からの提言もあった。

 こうした中、小林さんは2013年8月、社会福祉法人の理事長に抜てきされ、両立は困難になった。施設の経営者の立場でペンを取れば、いつかは行政の広報紙のような紙面が現れる懸念もあった。後継者は見つからず、そうまでして存続する意味はないと考えた。号数は最終の3月で250号になる。

 廃刊を踏まえ、「マインドなら」と協働関係にあるNPO法人県精神障害者家族会連合会(仲田昭七理事長)は近く、月刊の会報紙を創刊する。日ごろの活動紹介や会員家族への案内を掲載するほか、当事者や家族の置かれている厳しい実態についても発信しながら、社会に協力を求めていく。

 小林さんは「マインドならは廃刊になるが、(取材手法の一つとして大事にしてきた)情報公開の実践を(理事長を務める)施設の職員も行うようになった。精神病院の立ち入り検査の結果などを開示請求している様子に接すると、うれしい。福祉の専門職として物事を鳥瞰(ちょうかん)し、広い視野で見ていくことは大事だ」と振り返った。

読者の声

comments powered by Disqus