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地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野善一

奈良県庁内コンビニの営業問題 県、「職員の福利厚生施設」と譲らず

 奈良県が奈良市の市街化調整区域にある県庁の中に開設したコンビニエンスストアに対し、同市が都市計画法に抵触する恐れがあると指摘している問題は、市によると県からの回答待ちというが、県は今のところ「コンビニは職員の福利厚生施設」との立場を譲らない。

 県は昨年3月、隣接する奈良公園の観光拠点づくりの一環で、県庁東棟1階に喫茶の機能を持つコンビニを開設した。奈良市の市街化調整区域でコンビニを開設するには通常、市の開発許可が必要だが、県は説明で、それまで県庁地下にあった職員の福利厚生施設の売店を閉鎖して移すものとした。このため、市は許可を不要とした。しかし、実際には、土・日曜などの閉庁日は観光客などの利用が圧倒的に多いことから、市は状況が変わったと判断した。

 仲川元庸市長は昨年12月2日の市議会定例会本会議で同問題について問われ、「福利厚生施設という用途からは大幅に逸脱している恐れがある」との認識を示した。その理由として、早朝から夜遅くまでの営業や開庁していない土・日曜の営業、酒類や土産物を販売している点を挙げ、「法令違反と判断すれば、県に対し指導し、是正を求めたい」と答弁した。市は県に対し、仲川市長の答弁内容を伝え、市の立場をあらためて示した。

 今月4日の市議会建設企業委員会でも、中原達雄・市開発指導課長が「現状は、営業形態および利用形態について職員の福利厚生施設という用途から逸脱している旨を伝えており、その回答を待っているところ」と述べた。

 これに対し、県は「こちらが奈良市に再三、協議を申し入れしているのに応じていただいていないのが実情。反論する機会を与えていただきたい」とする。

 中西康博・県知事公室審議官は13日、取材に対し、「奈良市の指摘には事実誤認がある。コンビニの利用者、売上の大半は職員という実態が、職員の福利厚生施設であることを表している。もともと市街化調整区域にあった県庁の、もともと地下にあった職員の福利厚生施設の売店をリニューアルしただけ。朝早くから夜遅くまで勤務し、土・日曜も出勤する職員のために店を開けてもらっている」と県の正当性を強く主張した。

 さらに、中西審議官は「奈良市には、コンビニ開設までに営業時間や酒類や土産物の販売を伝え、その上で問題はないと了解をもらっていた。市の立つ位置が変わったのか」と不満を口にした。

 県が2013年、コンビニの出店者を公募した際、公募要領は目的について「民間事業者のノウハウを生かした観光交流拠点づくりを行い、来訪者の利便性(職員の福利厚生を含む)の向上を図りたい」と記載、観光を前面に出していた。この点について、中西審議官は「職員向けだけだと営業として成り立たず、出店者の応募が望めなかった」と釈明した。

 県の12年策定の奈良公園基本戦略は、県庁周辺について周遊環境の向上を図る場と位置付け、県庁東棟を観光交流の拠点として整備している。コンビニの担当も県奈良公園室となっている。

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