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発行者/奈良市・浅野善一
浅野善一

県庁横の歩道撤去、道路構造令の基準から後退 代替の広場通路では満たさず

歩道が撤去された奈良市道(左)と奈良県が歩道の代替機能を果たせるとする県文化会館の広場通路(右)

歩道が撤去された奈良市道(左)と奈良県が歩道の代替機能を果たせるとする県文化会館の広場通路(右)。左奥は県庁=2015年4月18日、同市登大路町

 奈良県が車道拡幅を目的に歩道を撤去した、県庁横の奈良市道。道路を新設、改築するときの技術的基準を定めた国の道路構造令などに照らせば、反対に歩道の設置を求められる道路に相当することが、「奈良の声」の調べで分かった。県は、市道に隣接する県文化会館の広場通路が代替機能を果たせるとするが、同通路は市道には属さない任意の通路。市道を管理する市の権限は及ばず、代替機能の維持は県任せになる。歩行者にとって交通安全環境は後退した。

 市道は、同市登大路町の県庁の西側を南北に走っている。歩道は道路の東側に100メートル余りにわたってあった。県は車道を拡幅するため、これを撤去した。奈良市に対しては、市道西側に隣接している県文化会館広場の通路で、代替機能を確保すると約束した。道路法に基き、市から工事の承認を得た。車道拡幅によって、往復2車線のうち、南行きの車線を右折と左折の2車線に増やした。県は、県庁の隣で観光バスターミナル「登大路ターミナル」の整備を進めており、バスの通行を容易にするのが狙い。工事はことし3月に完了した。

 道路構造令は道路法に基づく政令。都道府県道や市町村道の構造の技術的基準は、道路構造令やこれに準拠した各自治体の条例で定められている。県庁横の市道については、道路構造令が定める道路の区分のいずれに属するのか、市の市道の台帳に記載はないが、市土木管理課によると、第4種第3級に相当するとみられる。第4種は都市部の一般国道、都道府県道、市町村道。第3級は、道路を新設、改築する場合に想定される1日当たりの計画交通量が500台以上4000台未満とされている。

市道に属さず

 道路構造令によると、歩道は工作物によって区画された道路の一部。第4種第3級の道路では、道路の各側に設けるものとされている。同市道だと、撤去した歩道に加え、もう一方の側にも歩道が求められることになる。市土木管理課によると、歩道は1970年の道路構造令施行以前に設置されていた可能性があるというが、片側だけであっても基準に近づくものだったといえる。一方、歩道を撤去した場合に、任意の通路に代替機能を持たせられるというような規定はない。同広場の通路は道路法や道路構造令の対象外。

 今回の車道拡幅工事では、広場の一部を削って道路全体を拡幅し、歩道を残す方法も考えられるが、県道路環境課によると、市道に並行する広場通路がある上、事業費の節減という点から検討はされなかったという。

 道路構造令や市条例の基準は参考であり、歩道についても、地形の状況その他の特別の理由によりやむを得ない場合は、この限りでないとしている。ただ、これらは道路や歩道を新設したりするときの基準を定めたもの。市土木管理課の担当者は「歩道撤去のルールはない。既存の歩道の撤去自体、例がない」とした。

機能確保の約束、口頭確認にとどまる

 記者は市の情報公開条例に基づいて、同市道の車道拡幅工事に関する文書の開示請求をした。開示された県の申請書、市の承認の文書の内容は車線を2つから3つに増やすことについてのみで、歩道の撤去やその理由、県が広場の通路で代替機能を確保すると約束したことについては、文書や記載はなかった。県と市の担当者間の口頭での確認にとどまっていたことが分かった。

 市道に属さない通路は、市の権限が及ばない。広場に建物を建てたり、広場を第三者に売却するなどして通路がなくなるようなことも、市の承認なしにできる。県や市の担当課で経緯や約束について引き継ぎが途絶えれば、歩道の代替機能が確保される保証はない。市土木管理課の担当者は、口頭確認にとどまったことについて「相手が県なので信用をした」とした。

 県と市に対し、歩道の撤去は道路構造令の基準から後退することにならないか質問した。県道路環境課は「道路構造令や条例は、地形の状況その他の特別の理由によりやむを得ない場合は、この限りでないとしており、道路管理者が必要性を判断できる記載になっている。県は道路管理者の奈良市と協議を行い、工事の承認を得ている」とした。一方、市土木管理課は「車の通行という目でみればプラスになっている。隣接する広場で歩道の代替機能は確保されている」とした。

歩道撤去を道路構造令の基準で見てみると(「奈良の声」作成)
  相当する道路の区分 同区分における歩道、車道の基準 実際の状況
県の車道拡幅工事前 同工事後 問題点
奈良県庁横の市道

第4種第3級(都市部の一般国道、都道府県道、市町村道)

歩道 道路の各側に設ける 道路の片側にあった 撤去。歩道ゼロに 基準から後退
車道 往復2車線 往復2車線 往復3車線(一方の車線に右左折の2車線を確保)  
奈良県文化会館広場通路 道路に当たらないため道路法、道路構造令の対象外 広場通路 撤去した歩道の代替機能も 歩道ではなく、任意の通路。奈良市道には属さず、市の権限は及ばない

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