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地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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タカの翼)形から種類を見分ける/連載 野鳥~自然を生きる知恵・与名正三…8

青空を背景にゆったりと飛翔するオオタカ

青空を背景にゆったりと飛翔するオオタカ

鳥の翼

獲物を見つけ、降下するハイタカ

獲物を見つけ、降下するハイタカ

青空を背景に旋回上昇するクマタカ

青空を背景に旋回上昇するクマタカ

ハチの巣を持って旋回するハチクマ

ハチの巣を持って旋回するハチクマ

営巣地上空を旋回するサシバ

営巣地上空を旋回するサシバ

 日本に生息するタカの仲間は22種類。識別は飛翔(ひしょう)する翼の形と、羽ばたきなどで行います。野鳥にとって飛ぶための大切な体の一部「翼」は左右対象で、ほとんどの野鳥の翼は主に、両側の翼それぞれに初列風切羽10枚、次列風切羽12~13枚と尾羽12枚から構成されます。

 しかし同じタカの仲間でも翼の形状は、それぞれの種類の生態によって異なっています。例えばオオタカやハイタカなどはハト、ヒヨドリなどの野鳥を追いかけて捕食します。そのため、獲物となる野鳥よりも早く飛ぶ必要があります。したがって翼は肉厚で、構造もより推進力が出るように次列風切羽の部分に膨らみがあります。方向転換がスムーズに行えるよう、初列風切羽の6枚目までが人間の指のような形状になっています。また尾羽も長く、狭いところに逃げ込もうとする獲物を追尾するのに適した翼の形状をしているのです。

 また、大型のクマタカは旋回して上昇気流に乗り谷から谷へと移動し、獲物のテンやイタチ、ウサギなどを林内で待ち伏せして捕らえます。翼は初列風切羽から次列風切羽にかけて大きく膨らみがあり、たくさんの揚力を受け、旋回に便利なように奴凧(やっこだこ)のような形状をしています。

 夏鳥のタカ、ハチクマは5月初旬、東南アジアから日本に渡来します。渡来直後は谷から谷へと移動しながら、谷の中のため池やスギの植林地などでヘビやトカゲなどを捕食します。ヒナが成長するにつれ積極的にハチの巣を探します。ハチを求めて林内を移動するため、初列風切羽はクマタカよりも細長く、繊細になっています。

 またハチクマ同様、夏鳥のサシバは3月下旬、東南アジアから日本に渡来し、田んぼや雑木林などのある里山で、ヘビやトカゲなどを捕食し子育てを行います。ヒナが一人前になり大空を飛べるようになる秋には、再び東南アジアまで渡りをしなければなりません。したがって翼は次列風切羽にあまり膨らみが無く、厚みも薄く長距離を移動するのに適した構造になっています。

 野鳥の観察会などでタカの仲間が発見されるのは、ほとんどが飛翔中です。翼の形状から種類を特定し、そのタカの生態や環境、渡って行く姿を連想するのも、楽しいのではないでしょうか。(よな・しょうぞう=野鳥写真家、月1回更新予定)