春の兆し)さえずりや求愛、行動活発に/連載 野鳥~自然を生きる知恵・与名正三…7
寒緋桜の枝先に止まり獲物を狙うカワセミ
ウメの枝先に止まるスズメ
寒緋桜の横枝に止まり、花の蜜を吸おうとするメジロ
寒緋桜の中枝に止まり、鳴き声を上げるヒヨドリ
レンゲ畑の上を飛翔するヒバリの番(つがい)
リュウキュウウグイスを捕らえたサシバの若鳥
2月中旬、厳しい寒さが過ぎて暖かい日が何日も続くと、私たち人間は、ようやく春が来たのだと実感します。またテレビや新聞で報じられる、季節の話題を見ることによって、春を感じる方もいると思います。はたして野鳥たちは、どのようにして春を感じ、行動はどのように変化するのか考えてみたいと思います。
初めにウグイスのさえずりを例にとってみましょう。本来、ウグイスは梅の花の咲く時期から鳴き始めるといわれています。しかし、古来ウグイスを飼い鳥としていた人々の中には、鳥籠に覆いをし日照時間をコントロールすることによって、より早くさえずりを楽しんでいた人々もいたようです。この事から考えられるのは、野鳥たちは日照時間が長くなると春を感じ、行動に変化が現れるということです。
また、野鳥たちにとって気温の変化も春を感じる手段のひとつではないでしょうか。今年1月下旬、鹿児島県出水平野で越冬していたマナヅル、ナベヅルの群れが、例年より10日も早く北へ向かって旅立ったというニュースがテレビで報じられました。原因は、地球温暖化による気温上昇と関係があると考えられています。このような自然環境の変化も、春を感じる手段のひとつかもしれません。
スズメは梅が咲く頃から行動が活発になり、スズメ同士2羽でじゃれ合う姿を、多く見かけるようになってきます。また、サクラが開花すると、花の蜜を求めてたくさんのメジロやヒヨドリが集まって来ます。さらに、草原やレンゲ畑などではヒバリが頻繁にさえずるようになり、求愛行動も盛んに見られるようになってきます。
春が近づくと、越冬中の猛禽(もうきん)たちの捕らえる獲物にも変化がみられます。それまでムカデやバッタなどの昆虫を主食にしていたチョウゲンボウやサシバは、ウグイスやメジロ、キセキレイなどの野鳥を積極的に捕獲するようになってきます。3月下旬東南アジアや南西諸島で越冬していた猛禽たちは、一斉に本土に向かって旅立ちます。したがって、長距離を飛行するために体力をつけなければなりません。渡りのために、より栄養価の高い獲物を捕らえるのだと考えられています。
以上野鳥たちが春を感じる手段と、行動の変化をいくつか解説しましたが、これ以外にもたくさんの事例があると思われます。読者の皆さんも野山に出て、ぜひ自分だけの「春の兆し」を探してみてはいかがでしょうか。(よな・しょうぞう=野鳥写真家、月1回更新予定)