リニア駅誘致要望、奈良市と連名で 大和郡山市、市内候補地選定に向けた市民対象アンケートの直後
リニア駅誘致を掲げた大和郡山市設置のPR看板=2022年2月28日、同市北郡山町
リニア中央新幹線「奈良市付近駅」の自市への誘致に向け、それぞれ活動してきた仲川げん奈良市長と上田清大和郡山市長が2月18日、「結束して取り組むことが重要」とする要望書を連名で荒井正吾知事に提出した。大和郡山市では直前に、市民らを対象に独自の市内候補地選定に向けたアンケートが行われている。両市長には、どのような検討を経たのか十分な説明が求められる。
知事が公表
要望書提出を公表したのは、当事者の両市長ではなく要望先の荒井知事。2月21日、県の新年度予算案発表の記者会見で明らかにした。会見の内容は県のホームページで確認できる。
知事は会見の冒頭、新年度の予算編成についてリニアとの関連を「強く意識している」と説明。計画では名古屋・大阪間の開業は2037年と決定されていることから、「奈良市付近駅の設置が15年後に迫っている」との認識を示し、奈良市付近駅の早期確定の必要性を強調した。関連する動きとして、要望書の提出があったことを報告した。要望書の写しも配布した。
要望書は「今後、アクセスや駅周辺のまちづくりの具体的な検討に着手する観点からも、本県の候補地として一致結束して取り組むことがますます重要」とした上で、「リニア中央新幹線の整備効果を奈良県全域の発展に生かし、ともに未来を切り拓(ひら)く観点から、奈良市付近駅の設置を要望」と述べ、知事に「実現に向け尽力を」と求めている。要望書という体裁だが「一致結束」の誓いにも見える。
荒井知事は「今まで奈良市内と郡山市内の2つに分かれて、対外的には駅の取り合いみたいな印象を与えていた。共同要望は大変前向きな動き」と解説した。
一方、この日まで、両市から要望書提出の公表はなかった。知事の会見が行われたのは同日午前。大和郡山市は午後、報道関係者からの問い合わせを受け、市長のコメントを発表した。奈良市では午後に市長の定例会見があり、仲川市長が記者側からの質問に答える形で要望書提出を認めた。市長は「どちらが要望書提出を持ち掛けたのか」との質問には「どちらからということではなく」として、はっきりとは語らなかった。
大和郡山市が実施したアンケートは、リニア駅を誘致する市内の候補地を選定するための調査検討業務の一環で、1月10日までの約1カ月、市が無作為抽出した市民1500人と商工団体を対象に、リニア中央新幹線の開業や市内への駅設置について期待することなどを尋ねた。市企画政策課は、要望書提出がアンケートの直後だったことについて、調査は本年度の当初の予算で決まっており、アンケートは粛々と事務を遂行したものと説明した。
また、同課は要望書提出の検討を始めた時期について、取材に対し「年末から年始に掛けて」と答えた。検討開始から提出までの期間は1カ月余りだったことになる。
市は2月25日、ホームページで要望書を公開した。この中で、要望書提出の理由について「まずは県全体の発展を考え、県内に中間駅が設置されることが重要であり、一致結束して取り組むことが大事との認識に至った。これまで行ってきた要望よりも高次の位置付け」と説明する一方、「本市が奈良市付近駅の候補地であるということに変わりはない」と述べて、方向転換ではないとの考えを表明している。
奈良市でも、連名の要望書提出の前に市内へのリニア駅誘致に向けた活動を行っていた。昨年12月21日、仲川市長が会長を務めるリニア中央新幹線奈良駅設置推進会議が市内への誘致を求める要望書を知事に提出している。市観光戦略課は、連名の要望書提出の検討を始めた時期について「それぞれの誘致活動より高い位置付けの要望になる。県に誘致するのが大目標。今までと変化はなく、いつかというのを答えるのは難しい」と述べて明確にしなかった。
同市では3月2日現在、連名の要望書提出についてホームページへの掲載はない。同課は「事務作業上できていない。掲載は検討していきたい」と話している。昨年12月の推進会議による要望書提出の際は、提出したその日のうちにホームページに掲載している。
奈良市付近駅について、奈良市が候補地として提案しているのは、八条・大安寺地区のJR新駅周辺やJR平城山駅周辺など3カ所。大和郡山市はこれまでにJR大和路線と近鉄橿原線が交差する本庄町周辺を提案しているが、本年度の市内候補地選定の調査検討業務では、同所を含め複数箇所を候補地として検討しているという。
県の新年度予算案のリニア関連は、奈良市付近駅の想定ルートの調査・検討と関西空港接続線の調査・検討などで2500万円。
名古屋・大阪間の中間駅の誘致を巡っては京都府も名乗りを上げている。駅の設置位置はJR東海が決定する。 続報へ