水道一体化構想 奈良市長、県最終提案に「デメリット解消するほどでない」 議会予算決算委で答弁
上下水道一体化にまつわる課題などを検証している奈良市企業局=2022年3月
県域水道一体化構想に慎重な奈良市に参加を促すための最終提案として、県主導の県広域水道企業団設立準備協議会・第5回論点検討部会が提案した水道料金引き下げ効果があるとする県支援金146億円の増額に対し、仲川げん市長は28日、開会中の市議会予算決算委員会で「奈良市にとってもデメリットを解消するだけものではない」として慎重な姿勢を崩さなかった。
市長は「(最終提案は)一般会計繰り入れルールや上下水道一体化に向けた課題を残す」とし、「参加・不参加の判断は、参加を予定している市町村に影響を及ぼすので早期に決断する。仮に2025年度に開設予定の企業団に入らないとしても、広域化に向けて周辺自治体と管理の一体化や施設の共同化に努めたい」と答弁した。
全国的にも異例な県による水道広域化参加誘導策。県は、企業団(一部事務組合)の事業開始目標の2025年度から10年間で得る国交付金について、当初の試算である396億円から104億円減額の292億円に下方修正せざるを得なくなったため、これまでに県費146億円で補てんすることを決めていたが、今月21日の第5回の同部会でさらに146億円の上乗せを提案した。
県支援策の水道料金引き下げ効果疑問、公明が指摘
この日の委員会で宮池明委員(公明党)は、県が老朽排水管更新の積極支援として提案する146億円の追加支援は県が主張するような料金の引き下げにつながる効果が乏しいと指摘した。
市水道事業の2021年度決算によると、修繕費の予算1億2300万円に対し、実際に要した費用は5800万円。通常、地下の埋設物などの状況など予測できないことがあり、多額の不用額が出るのは珍しくないという。
宮池委員は「各年度、修繕費を満額執行できない以上は、県の追加支援(企業団負担の引き下げ)によって30年後に現行試算より6円(1立方メートル当たり)下がるという根拠も薄れる。10年限定の補助金支給の後は、企業債(借金)を活用することになるだろうが、負担に耐えられるのか。県の提案は構造的に欠陥があるのでは」と批判した。 関連記事へ