奈良県域水道一体化構想 葛城市長、参加明言せず 議会調査特別委
葛城市役所新庄庁舎=2022年6月
奈良県葛城市は県域水道一体化構想について、流動的な要素が多いとして参加を明言するまでに至っていない。
阿古和彦市長は、9月28日の市議会県域水道一体化調査特別委員会(藤井本浩委員長)で、給水規模の大きい奈良市が参加に慎重なことを踏まえ、「(同市の決定次第では)今後、急激な変化が起こる可能性がある」と答弁した。
また、市議会が今年6月、市は一体化について市民に説明責任を果たし、市民の意見を聴取するよう求めた住民の請願を採択したが、阿古市長は「住民説明会を開くには不確定、流動的なことが多い」と説明した。
県が定めたスケジュールによると、今年11月中に一体化の企業団(一部事務組合、2025年度開業目標)設立に向けた基本計画案が策定される。水道料金が安い葛城市と大淀町に限り、別料金で参加できることを県は提案したが、市上下水道部によると、具体的な連絡はまだないという。「このままでは住民に提供できる情報が少ない」と担当者は話す。
県水受水比率が増加見通し 一体化の料金試算にも影響
28日の同特別委で市は、水道水源ため池の流量調査を実施中であると報告した。市営3浄水場のうち新庄浄水場の水源となるため池の一部に、流入量などが不安定な傾向が見られる池があり、県営御所浄水場からの受水比率が今後、増加する見通しを述べた。
市上下水道部によると、県営水道の受水が増えれば、市営水道の経費が増え、企業団の収入は増える。単独経営と一体化とどちらが有利か、奈良市などで注目されている水道料金の試算比較にも微妙な影響を及ぼす。このことも、住民説明会が開きにくい不確定要因のよう。企業団が受け継ぐ用水供給事業の卸売価格の決定は、企業団設立後とみられる。
葛城市が実施中のため池水源の流量調査は、本年度内をめどとした水道事業の認可変更手続きに伴うもの。新庄、当麻の2町が合併し新市が発足した2004年、県から認可を受けたが、その後、主水源が地下水(深井戸4基)からため池8カ所に変わるなど事業内容が変化し、調査結果などを踏まえて計画給水量などを見直すという。
谷原一安副委員長(共産党)は28日の同特別委で「葛城市の水道が安いことが評判になり、移住してきた若い人々が暮らしている。市外の事業者が廉価な工業用水として本市の水道水を買い求めることもある。まちづくりの視点から市営水道の良さを見つめることも大事」と訴えた。 関連記事へ