大和郡山市長、昨年の市長選公約は「水道一体化への参加は見送り」 方向転換に「流れ変わった」と説明
取材に答える上田清大和郡山市長=2022年12月6日、同市役所(浅野善一撮影)
2021年6月の大和郡山市長選で「奈良県域水道一体化への参加は見送り」を公約にした上田清市長。県広域水道企業団設立準備協議会が示した、持ち寄り資産のルール化と2地下水浄水場(生駒市、大和郡山市各1)存続方針を受けて11月5日、市議会全員協議会で「前向きに参加を検討」と表明した。有権者にはどのように説明するのか。上田市長は6日、「奈良の声」の取材に対し「流れが変わった」と説明した。
「流れが変わったのは10月13日だった」。上田市長は説明する。奈良市が一体化協議からの離脱を表明してから9日後のこの日に開かれた、県広域水道企業団設立準備協議会(会長・荒井正吾知事、県と26市町村)で、協議会事務局は、新たな方針として「大和郡山市の一体化参画に向けて、市の意見を聞きつつ、調整を進める」と報告した。
2021年6月の市長選挙公報で県域水道一体化への参加見送りを公約に掲げた上田市長の欄
同日の協議会では、香芝市の福岡憲宏市長の発言が注目された。「内部留保資金というのは、その地域の水道のために経営努力によってためられたものであれば、そこに対し何らかの一定のルールで、水道施設の更新に対し有利なこと、優先的に充てられることが考えられてもよいのではないか」と提案したのだ。それまでの全資産の引き継ぎ方針に反発する大和郡山市との打開を探る内容で、荒井知事は理解を示す。福岡市長の提案が具体化され、11月29日の協議会でこの新ルールが承認された。
上田市長は「市民の財産を守るという観点から一体化に参加した場合、昭和浄水場が存続をされることは防災上の観点からも有意義。また、本市がこれまで努力を重ねてきた管路の更新については、引き継ぎ資産の配分のルール化によって管路更新率がおおむね1.5%という高い水準が維持されること、さらに将来において水道料金が抑制されることなどを総合的に勘案した結果、市の要望を踏まえたたいへん前向きな一体化の提案をいただいたと受け止めている」と評価する。
大和郡山市長選の前年の2020年6月。市は、一体化に参加することを前提として、水道会計の内部留保資金28億円を一般会計に移転した。市議会では維新と共産の会派が反対したが、賛成多数で議決された。市のこの対応を荒井知事は「隠した」と非難、これに対し、市は市広報紙で「正当な行為」と反論した。
これがもとで2021年1月、県と27市町村が締結した一体化への覚書に大和郡山市は加わらなかった。「協議に参加してきた市町村の中で締結しなかったのは1市だけ。当時は孤立感もあった」と上田市長は述懐する。
上田市長が一体化への参加意思を表明した11月5日の記者会見資料。料金試算について、単独経営より抑制効果があり有利だと説明している。県主導の一体化を擁護するムードが市に出てきた。ただ、料金試算を巡っては、一体化から離脱した奈良市は、どのような条件を設定するかでデータに違いが生じることを指摘したこともある。
市民説明会が必要
2021年6月の大和郡山市長選は上田市長と新人の一騎打ちだった。有権者に配布された選挙公報では、「多くの市町村が多額の負債を抱える状態の中での一体化への参加は見送り」と表明した上田市長に対し、新人の前市議は「一体化に参加し、市民の負担を減らします」と訴えた。水道広域化への参加の可否は争点だった。
これに対し、一体化参加に向けた第一声は、非公開で行われた11月5日の市議会全員協議会だった。有権者は置き去りになっていないか。
生駒市は11月20日に市民説明会を開催した。葛城市も12月13日に開催を予定しているものの、総じて、一体化に参加予定の市町村は説明会開催に後ろ向きといえる。上田市長は、年内にも一体化への正式参加を表明する公算が大きい。その前に市民向けの説明会が必要ではないか。 関連記事へ