南和広域ごみ処理施設 操業終了後の跡地、随意契約で地元企業へ 奈良県大淀町、撤去費用の削減が理由 合意書交わす
2023年9月に操業を終える南和広域美化センター=2023年5月31日、奈良県大淀町芦原
奈良県大淀町など4町村でつくる南和広域衛生組合(管理者・辻本眞宏同町長)のごみ処理施設「南和広域美化センター」が2023年9月で操業を終える。大淀町は組合に貸している同町芦原の美化センタ―敷地の跡地利用について、同じ芦原地区で事業をしている地元企業と売買に関する合意書を交わした。「奈良の声」が独自に得た情報で分かった。
売却は随意契約で、地元企業が施設の一部を再利用するとしていることから、その分、施設の撤去費用の削減が期待できるという。ただ、公有地の売買は一般競争入札が原則であり、特定の相手との随意契約は法が規定する場合に該当するものでなければならない。跡地を売却することや売却先を決定したことは町民に公開されておらず、町はその過程について情報の公開と説明に努める責任がある。
同組合は大淀町、下市町、黒滝村、天川村で構成される。美化センターは1993年に操業を開始した。敷地面積は約1万7000平方メートルで、焼却炉棟のほか事務所棟、リサイクル棟、車庫棟などの施設がある。
売却先は同町芦原の徳本砕石工業。町、組合、芦原区、同社の4者は2023年3月、跡地利用についてそれぞれの役割や譲渡の条件を定めた基本合意書を交わした。町と組合はそれぞれの議会に対し、合意書締結について事前に説明した。町は2月8日の全員協議会、組合は同17日の全員協議会で説明した。全員協議会は非公開の会議。町と組合は2023年度末の議会の承認と売買契約締結を目指している。
基本合意書によると、組合は焼却炉棟を除く施設を大淀町に譲渡し、大淀町は敷地と譲渡を受けた施設を不動産鑑定額に基づいて徳本砕石工業に売却する。
4者が合意に至る前提として、芦原区は2022年12月28日、町と組合に願い出書を提出。願い出書は、美化センターの操業終了後、跡地と施設を地域に根差した地元企業の徳本砕石工業に利用させ、地域振興や地元活性化につなげてほしいと要望している。
組合は、芦原区との間で交わしている公正証書に基づき、操業終了後は施設をすべて撤去しなければならない。町と組合は、施設の一部が再利用されることで撤去費用を削減できると判断した。試算では、施設のすべてを撤去した場合の撤去費用は約9億2500万円。これに対し、再利用しない焼却炉棟のみを撤去した場合は7億3700万円。約1億8000万円安くなるという。
撤去費用は組合の構成町村がそれぞれのごみの量に応じて分担。大淀町は最も多い約53%を負担する。
また、敷地の一部945平方メートルは民有地で、組合が賃借している。組合によると、芦原区の願い出書と同じ2022年12月28日、所有者から、第三者への売却の願い出書が提出された。賃貸借契約は第三者への譲渡を禁止しているが、願い出書が従前の契約条件を引き継ぐとしていたことから、組合は禁止を解除したという。民有地は2023年1月26日、合意書の締結に先行して徳本砕石工業に売却された。
地方自治法により、地方公共団体の売買などの契約は一般競争入札が原則。随意契約は同法施行令が定める場合に限定している。大淀町環境整備課は取材に対し、跡地の売却について同施行令167条の2の1項2号「性質または目的が競争入札に適しないもの」に該当するとした。
同課はこれに該当する理由について「土地と施設をセットで売却できれば解体費用を削減できる。事務所棟の底地の一部の所有者が徳本砕石工業で、相手方を選択できる余地がない」と説明した。
町建設環境部長は取材に対し「公平、公正、透明性は分かりつつ、この方法が町民の負担軽減につながる。市街化調整区域のため建物を解体すると新たに建てられない。このため土地の評価が下がってしまう。地元が野生動物による被害を心配している。防犯上も不安としている。難しいのは、建物の撤去を地元に約束しており、再利用は地元の願い出によってしか発生しない」と話した。
組合事務局長は、操業期間を残して民有地の譲渡禁止を解除したことについて「今年9月で操業が終了するので、組合事業に影響は及ばないと判断した」と話した。
徳本砕石工業は芦原地区で70年以上、砕石事業などを営んできた。徳本達夫社長は取材に対し「跡地に本社事務の機能を移し、建物は会社の事務所、倉庫、車庫として使う。こちらから芦原区に跡地の活用を申し入れた。芦原区からは“建物を撤去すれば荒れ放題になる。会社事務所のような活用なら良い”と理解を得られた」と話した。
組合事務局長によると、組合議会の全員協議会では合意書について基本的には理解を得られたという。一方で売却の進め方について批判する議員もいたという。 関連記事へ