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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

関西広域)広域水道企業団との統合議案を否決 東大阪市議会建設水道委、参加巡り議論百出

大阪府6市水道統合の受け皿となる大阪広域水道企業団との経営統合関連議案を賛成少数で否決した東大阪市議会建設水道委員会=2024年3月22日、同市荒本北1丁目の同市役所

大阪府6市水道統合の受け皿となる大阪広域水道企業団との経営統合関連議案を賛成少数で否決した東大阪市議会建設水道委員会=2024年3月22日、同市荒本北1丁目の同市役所

 大阪府内の6市が来年度の水道統合を協議しているが、うち東大阪市の市議会定例会建設水道委員会(7人)は3月22日、受け皿となる大阪広域水道企業団(一部事務組合、用水供給事業、14市町村水道事業)との経営統合議案を賛成少数で否決した。

 賛成したのは野田義和市長の与党、大阪維新の会所属の委員1人のみ。残る公明、自民、共産の主要会派の委員は反対に回った。このため定例会最終日の3月26日に予定の本会議採決は予断を許さない状況になった。

 3日間にわたる委員会の議論では、岡修一郎委員(自民)は「(質疑を重ねるごとに)分からないことが増えていく。市民の大事な水道資産を放出することはできない」と述べた。十鳥雅雄副委員長(公明)は、統合のメリットとされる市内最大配水場の耐震化・更新工事について「仮に統合しなくとも技術連携協定を結んでいる大阪市水道局(単独経営)からの支援(有償)で可能ではないか」との見方を示した。

 統合を巡っては議論が百出。建設水道委員会に先立って行われた本会議の代表質問でも賛否の応酬があった。賛成の立場から中原健氏議員(維新)は「大阪府は2012年策定の水道ビジョンで将来像として府域一水道を目標に企業団を核とした市町村水道事業の統合を位置付けている。その後、国が2019年に水道法を改正し、水道事業基盤の強化に努めることを定めた。今回の統合はどのような効果があるのか」と尋ねた。

 市水道総務部長は「今後の施設整備費の縮減が図られ、水道料金の値上げを抑制できる。技術継承問題を解消し、非常時の対応も充実する。統合すれば水道事業の全てを企業団に引き継ぐが、統合後も変わりなく水道サービスを行い、市民の水道水を今までと変わらず利用していただける」と答弁した。

 統合反対の立場からは上原賢作議員(共産)が「昨年(7市水道統合協議に参加していた)和泉市議会は技術職員の継承、耐震化などの水道事業計画や料金など重要なことを市民が決定できないとして統合しないと判断した。その後、同市を除く6市の協議で効果額は上昇したのに料金試算が横ばいなのはなぜか。大阪市や堺市が参加していない統合に東大阪市が参加するメリットはあるのか。大阪広域水道企業団に入らなくても3市町村以上の統合にも国の水道事業運営基盤強化補助金の対象になるのでは。同企業団に入るメニューしか議会に示されていない」と批判した。

 委員会審議では、統合効果の算定期間が40年と長いことについてもさまざまな疑問が投げ掛けられた。自己水源をほとんど持たないにもかかわらず東大阪市は水道料金が府内平均より安いこと、企業団への身分移管を希望する職員が少ないことなども論じられた。

 県域水道一体化の協議が進む奈良県では、統合から30年後までの財政試算を行っているが、参加26市町村長から特段の異論は出ていない。また、法定協議が始まるより前に市町村営の浄水場を積極的に廃止へと導いてきた県主導の水道一体化では、自己水源の少ない小規模市町村ほど参加の機運が高まった。東大阪市の動向は奈良県の一体化論議に何らかの影響を及ぼすと見られる。 関連記事へ

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