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浅野善一

奈良の廃棄物収集運搬業者、無許可ごみ保管繰り返し 市行政指導で一時撤去も業務継続

倉庫からあふれ出たごみをパワーショベルを使ってパッカー車に積み込んでいるところ=2025年12月22日、奈良市内、浅野善一撮影(パッカー車をぼかしています)

倉庫からあふれ出たごみをパワーショベルを使ってパッカー車に積み込んでいるところ=2025年12月22日、奈良市内、浅野善一撮影(パッカー車をぼかしています)

 奈良県内で一般廃棄物や産業廃棄物の収集運搬業を手掛ける奈良市の業者が、収集したごみを処理施設へ運ぶのに分別したり、別の車にまとめたりする積み替えのための保管を、許可のないまま市内の同社施設で行っている。市の対応は相手方の任意の協力を原則とする行政指導が軸で、これに対し業者は指導のたびに一時的にごみを撤去しても業務そのものは継続、この繰り返しが長期にわたり常態化している。

 施設は市南部の工業地域にあり、周囲には小さな工場が立ち並んでいる。施設は倉庫だった建物を利用しているように見え、グーグルマップ上で測定すると、規模は東西約11メートル、南北約31メートル。正面出入り口には開閉式の囲いが設置されている。

【2025年12月22日午後、現地で】

 施設正面の敷地内に倉庫からごみがあふれ出しているのが、道路から見えた。ビニール袋に詰められたごみなどで、回りには空き缶も転がっていた。施設入り口にとめたパッカー車にパワーショベルを使ってごみを積み込んでいるところだった。背後の倉庫内にもうず高く積み上げられたごみが見えた。パッカー車は廃棄物を積み終えると出ていった。

 廃棄物処理法に基づき、一般廃棄物収集運搬業の許可は市町村、産業廃棄物収集運搬業の許可は都道府県または政令市が行う。この業者は県内では、一般廃棄物収集運搬業については大和郡山市と天理市、産業廃棄物収集運搬業については奈良県の許可を取得している。

 一般廃棄物収集運搬業者が収集できるのは、許可を取得した市町村内の事業所が事業活動に伴って排出する一般廃棄物。それぞれの市町村が設置するごみ焼却施設に手数料を払って搬入する。事業活動に伴って排出される廃棄物のうち、廃棄物処理法で産業廃棄物に指定されている20種類以外の廃棄物が一般廃棄物。

【2026年2月12日午後、現地で】

 廃棄物は倉庫の奥に寄せられていたが、量はあるように見えた。ごみの種類はビニール袋に詰められたごみのほか、段ボールや発泡スチロール容器、プラスチックケースなど雑多だった。

 バンで乗り込んでごみを降ろす事業所の関係者らしき人の姿もあった。降ろしたごみの中には事務器具のようなものも見えた。倉庫入り口にはごみを積んだ車の重さを示すものとみられる電光表示装置があって、バンの人物はごみを降ろした後、倉庫の一角の事務所で伝票のようなものを受け取っていた。事務所の扉には利用できる決済サービスを示すためとみられるシールが複数張ってある。

【同月27、28日、現地で】

 28日午前、大小複数のパッカー車が倉庫内でごみを積み込んで出ていった。大型のパッカー車のときにはパワーショベルを使って積み込んでいた。

 翌28日午前も、戻ってきたパッカー車がごみを降ろしたり、トラックからパッカー車にごみを分別しながら積み替えたり、倉庫内のごみをパッカー車に積み込んだりしていた。

 出ていくパッカー車の跡を追った。うち1台の行き先は天理市内の山辺・県北西部広域環境衛生組合(一部事務組合)ごみ焼却施設「やまとecoクリーンセンター」。別の大型の1台の行き先は京都府木津川市内の民間の産業廃棄物処分施設だった。

 「やまとecoクリーンセンター」に搬入できるごみは、同組合を構成する天理市など10市町村で出た一般廃棄物。この業者は天理市の一般廃棄物収集運搬業の許可はあるが、奈良市内にあるこの業者の施設で積み込まれたごみがどこの市町村から持ち込まれたものなのかは問題。奈良市は単独でごみ焼却施設を設置しており、10市町村に含まれていない。

 記者は3月21日、施設の事務所にいた男性に尋ねた。

・ここは何の作業をする施設か。
「ごみを集めている」
・どこから持ってくるのか。
「あっちこっちや」
・ここでごみの積み替えをしているのか。
「してない」
・持ってきたごみはいったん降ろしているのでは。
「降ろしてない」
・ごみは一般廃棄物かそれとも産業廃棄物か。
「分からん」

 この業者のホームページによると「一般廃棄物処理業」として事業を始めたのは1985年。2014年に株式会社として法人化した。奈良市の一般廃棄物収集運搬業の許可期間は2年で、この業者がそれまでと同様、引き続き許可を取得したのは2024年7月。しかし、そのわずか2カ月余り後の9月に許可は廃止された。市廃棄物対策課によると、業者の方から許可を返上したという。

 このため現在、施設がある奈良市で一般廃棄物収集運搬業を営むことはできない。加えて、一般廃棄物収集運搬業許可時に積み替え保管の許可は含まれていなかった。産業廃棄物についても全県から収集できるものの、積み替え保管の許可は含まれていない。

 奈良市廃棄物対策課によると、行政指導では施設にごみを持ち込んだり、保管したりしないよう指導してきた。定期的にパトロールをして監視を続けているが、頻度はほぼ月に1度以上になるという。周囲の人から通報があったときにも訪れ、ごみが保管されていれば撤去を指導しているという。持ち込まれているごみは一般廃棄物と産業廃棄物の両方ではないかとみている。指導は少なくとも4年前には行われていたという。

 業者は指導に応じて廃棄物の全部または一部を撤去しているという。撤去した廃棄物の処分先が分かるマニフェスト(産業廃棄物管理票)の提出を求めて、廃棄物が適正に処理されたかどうかも確認しているとする。

 しかし、この業者は一時的に廃棄物を撤去しても、施設での業務そのものは継続してきた。行政指導は行政手続法に基づく手続きで「相手方の任意の協力によってのみ実現されるもの」というのが原則。強制力はない。施設のごみがどこの市町村から収集され、どこの処理施設で処分されているのかについても市は確認できていない。

 この業者の代表者は「奈良の声」の取材に次のように答えた。

・奈良市の行政指導を受けていることについて。
「どこから話が入っているの。どこからの情報かも分からないのに話もできない。垂れ込みがあったということでしょ。(施設の倉庫に)今はごみあらへんやんか」
・施設にごみが運び込まれたり、積み込まれたりしているが。
「うちの関連の業者が持ってきおるだけの話や」
・御社のパッカー車も入っている。
「入っているわ」
・積み込んだごみはどこの処理施設に持っていくのか。
「それは何の話で来ているわけ。帰ってくれる」

 廃棄物処理法には、改善命令や措置命令など許可の取り消しや刑事罰に至る処分もあるが、市はそこまで進めてこなかった。市廃棄物対策課長は取材に対し「処罰が目的ではない。業者は撤去指導に反抗していない。今の状態を善しとしているわけではないが、周辺の生活環境に支障が生じる前に廃棄物を撤去させることが最優先」と説明した。

 同業の関係者は市の対応について、市の処分で許可を取り消された業者もあり公平性に欠けるとして「法律通りにやってほしい。指導だけでは効力はない」と訴える。

 この業者を巡っては、奈良市東部の山間部にある同社車庫の敷地に建物の解体ごみが大量に持ち込まれるという問題も生じている。市廃棄物対策課によると、複数の業者が持ち込んでおり、これらの業者に撤去するよう行政指導を行っているところという。応じた業者もあるという。代表者は取材に対し「うちは業者に早く撤去してくれるようお願いしている側。勝手に置かれているから」と主張した。

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