県有地の草刈り工事、発注するも着手できず 奈良市内の歴史的風土保存地区、9カ月経過めど立たず

草刈り工事に着手できないままになっている歴史的風土保存地区内の奈良県有地。右奥の森が唐招提寺境内=奈良市尼辻南町、2026年6月11日、浅野詠子撮影
奈良県は昨年11月、奈良市の唐招提寺に隣接する歴史的風土保存地区内の県有地の草刈り工事を市内の造園業者に発注したが、未着手のまま中止となっていたことが分かった。9カ月を経た現在もめどが立っていない。地元住民は「早く草刈りをしてほしい」と話している。
県景観・自然環境課によると、唐招提寺北側に隣接する同市尼辻南町の県有地1349平方メートルで、一般競争入札で落札した業者に工事を発注したが、着工に当たっての地元調整が難航したため、中止したという。
受注した造園業者は「(問題の)県有地への進入路の通行のことで、地元との話し合いが不調に終わった」と話す。
同課によると、昨年夏には、同じ県有地で草刈りはできた。通常、工事の際は、蓬莱山古墳(垂仁天皇陵)東にあるため池前の市道に車を止め、徒歩で200数十メートル先の県有地に入るという。
同課は取材に対し、地元調整が難航している理由について「公表すると、県に苦情を申し入れた人が特定される恐れがあり、個人情報保護の観点から差し控えたい。早く現地の草刈りをしたいが、解決の見通しが立たない」と話す。
県有地周辺は農地。現在、雑草が生い茂り、伸び放題になっている。このまま放置するとアライグマなどの害獣が巣を作り、農地に被害が及ぶ心配もあると同課はみている。
県有地は唐招提寺の境内と水路を挟んで隣接する。同寺の松浦俊昭執事長は「(「奈良の声」の取材を受けて)そんなことが起きているとは初めて知った。県有地は唐招提寺の境内から入ることができる。車両の通行も許可できる。県はなぜ寺に相談しなかったのだろう」と話す。
地元農家は「なぜ草刈りができないのか。早く実施してほしい」と話している。
歴史的風土特別保存地区内は古都保存法上の規制があり、土地利用に厳しい制限がある。地区内の民有地を自治体が買い入れる国庫補助事業があり、県は2024年度末までに明日香村、奈良市など6市村で計476ヘクタールを買い上げた。問題の県有地は1978年に買い上げている。
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