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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野善一

奈良県)御所市、「生活保護のしおり」未作成解消へ 厚労省、相談者への制度説明で用いるよう監査で指摘

奈良県内の自治体が作成している「生活保護のしおり」の一部

奈良県内の自治体が作成している「生活保護のしおり」の一部

 地方自治体が生活保護の申請相談者に制度の説明のため配布する「生活保護のしおり」を、御所市がこれまで作っていなかったことが市への取材で分かった。

 作成義務はないが、相談者に対してはきめ細かな面接相談や申請手続きへの援助指導が求められており、厚生労働省はしおりなどの説明資料を用いるよう手引で示している。厚労省や奈良県は同市に対する監査で指摘しており、市も現在、作成を進めている。

 しおりに決まった形はなく、各自治体が独自に作成している。橿原市のしおり(A4判、11ページ)は、生活保護が憲法第25条で保障された国民の権利であることを紹介し、給付の種類や手続きなどについて説明。市生活福祉課の窓口に置いてあり、自由に持ち帰れるようにしてある。奈良市のしおりも生活保護を受けた場合の権利と義務について説明するなどし、生活保護法の条文の一部を載せている。

 厚労省は「生活保護行政を適正に運営するための手引」を作成し、2006年3月、都道府県を通じて各自治体に通知するなどした。「手引」は、申請相談から保護の決定に至るまでの対応について、申請権を侵害することのないよう求め、しおりについて「保護の相談の段階から『保護のしおり』等を用いて制度の仕組みを十分に説明する」などと触れている。

 生活保護の事務は都道府県や市などが設置する福祉事務所が行う。県内には15あるが、県地域福祉課によると、御所市以外はいずれもしおりを作成しているという。

 御所市福祉課によると、同市では制度の説明は口頭で行い、困ったことがあれば何でもケースワーカー(相談担当職員)に相談してほしいと伝える形でやってきた。作りかけのしおりの文書が残っており、以前に作ろうとした形跡はあるという。しかし、完成に至らずそのままになっていたという。

 同課は「御所の古いやり方でやってきた。これまでも、しおりは必要かなというのはあったが、どの辺りまで説明すればよいのか悩ましく、いろいろ説明すれば分厚い手引書のようになってしまう。現在、他市の例などを調べている」とした。

 県地域福祉課によると、県は同市に対し少なくとも09年度以降、厚労省の委託で行う生活保護法施行事務監査の際に、しおりが未作成となっていることを口頭で指摘。13年度は同監査の結果通知に記載した。本年度の同市に対する同監査は厚労省が直接実施したが、やはり11月の結果通知で同様に指摘した。

 県地域福祉課は、しおりがないと面接相談が水際作戦(窓口での申請の抑制)になってしまう恐れがあるとし、「絶対に作れということではないが、しおりがあれば制度の周知徹底や適正な運営を図れる」とする。

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