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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野善一

奈良少年刑務所、明治のれんが建築残して 地元自治会が重要文化財指定を願う要望書

奈良少年刑務所建物の重要文化財指定を願う要望書を手渡す般若寺町自治会の小井修一会長(中央)と受け取る宮地重光所長=2016年5月18日、同刑務所

奈良少年刑務所建物の重要文化財指定を願う要望書を手渡す般若寺町自治会の小井修一会長(中央)と受け取る宮地重光所長=2016年5月18日、同刑務所

明治のれんが建築、奈良少年刑務所庁舎=2016年5月18日、奈良市般若寺町

明治のれんが建築、奈良少年刑務所庁舎=2016年5月18日、奈良市般若寺町

 奈良市般若寺町の明治のれんが建築、奈良少年刑務所建物を残してほしいと、地元の自治会が18日、同刑務所に重要文化財指定を願う要望書を提出した。同刑務所は建物の老朽化から、建て替えや施設移転の可能性がある。

 奈良少年刑務所建物は1908(明治41)年、奈良監獄として建てられた。明治時代、国が監獄施設の近代化を目指して建てた全国の「五大監獄」の一つ。現存しているのは同監獄だけという。洋風の重厚な造りが特徴で、奈良県教育委員会が2014年にまとめた県近代化遺産総合調査報告書は「日本の近代化の一側面を示す遺構として貴重」と評価している。

 要望書を提出したのは、地元の般若寺町自治会(小井修一会長)と同自治会を含む34自治会から成る鼓阪地区自治連合会(横田利孝会長)。この日は両団体の各正副会長計4人が同刑務所を訪れ、同様の趣旨の要望書を宮地重光所長にそれぞれ手渡した。

 要望書は「れんが造りの洋風門構えと高い塀は、今やなくてはならない風景として親しまれ、地元に定着している。地域の宝、日本の宝として、残していただけるようお願いする次第です」などとしている。

 宮地所長は、小井会長らに対し「建物が地元の人たちに愛されていることがよく分かった。要望はありがたい。しっかり受け止めて上に伝えたい」と返事した。

 小井会長は要望書提出に至った経緯について、「刑務所が計画された当時は、かなりの反対があったと地区の長老から聞かされた。地元は苦労して受け入れてきた。残して地元の役に立つようにしていただければ意味がある」と述べた。また、横田会長は「地元の意向を刑務所に伝えることが大切と考えた」と説明した。

 同刑務所建物の保存運動では、2014年10月、市民団体「近代の名建築 奈良少年刑務所を宝に思う会」が発足した。地元の自治会代表者や市在住の作家、まちづくり団体関係者、建築の専門家らが呼び掛け人になり、会長には奈良監獄を設計した山下啓次郎の孫であるジャズピアニストの山下洋輔さんが就任。勉強会などの活動を展開している。【続報へ】

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